vol.35 2021/04/09

顔の左半分は本心がでやすい? 表情認知の心理学

演じられた嘘の表情は左右非対称になる?!

「あんなおいしいワイン初めてです。家族で大感激しました」などと言われた時、今の発言は本音だったのかなと、相手の真意を疑ってしまうこともあります。本当にそう思ってくれたのなら嬉しいですが、もしかしたら気を遣って言った可能性もあります。そもそも日本人には、本音と建前がありますよね。また人は、話す時に自分の言葉と表情を使ってコミュニケーションを取りますが、日本人は欧米人に比べると、本音の感情を言葉でストレートに表現することが歴史的、文化的に少ない傾向にあります。よって、表情に関する心理学、これは相手の言葉の本音度、もしくは建前度を推測するのに役立つかもしれません。

表情と感情の関係を研究したことで有名なアメリカの心理学者ポール・エクマンは、人間の基本感情を「喜び」「恐怖」「嫌悪」「驚き」「悲しみ」「怒り」の6つに分類しています。もちろんもっと複雑な感情も人それぞれにありますが、ここでは結果が出やすいようにあえてざっくり分類をしました。

そして、同じくアメリカの心理学者であるハロルド・サッカイムは、このエクマンによる基本感情を発展させて、とてもユニークな研究を進めています。彼は表情分析を徹底的に行うために、エクマンが提唱して撮影した6つの基本感情の表情写真を縦半分に切り分け、それを反転合成し、右だけからなる顔と左だけからなる顔の写真を作りました。

すると、反転合成した顔写真は「喜び」の表情だけが右だけで作った顔・左だけで作った顔がどちらも同じ表情になり、その他5つの表情は右だけで作った顔と左だけで作った顔では表情に差が出ました。

実はエクマンはこの6つの感情の写真を撮る時に「喜び」だけ本当の感情が表れた様子を撮影し、他の5つの感情は演じられた嘘の表情を撮影していたそうなんです。

つまりこの実験から、本当の感情が表れた表情は左右対称になり、演じられた嘘の表情は左右非対称になることがわかったのです。

人の本音は顔の左側に出やすい

前述の実験では、相手の本音を知るためにはこういった表情を左右に分けて見てみるということも有効だということが明確になりました。

さらには左側の表情に注目することが重要だということも表情認知の心理学では分っています。

ビジネスパーソンや子育て中のお父さんやお母さん、彼氏彼女の気持ちを知りたい恋真っ最中の人! 例えば、部下の顔の右側がいかにやる気満々でも、左側の表情が暗ければ、その人はあなたに何か不満があるのかもしれません。

何事も深読みは禁物ですが、相手の言葉だけで判断出来ない時、顔を左右に分けて、左側の表情が本音なのかもしれないと考えてみるのも相手を理解するための手段かもしれませんね。

さて、次回は「メールに頼りすぎるのは危険? デジタルコミュニケーションの心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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