コンタクトレンズのアイシティ トップ>心理学者 植木理恵の瞳にまつわる心理学>自分の見た目に自信を持てないのはなぜ? 自分を受け入れるための心理学
vol.38 2021/07/09

自分の見た目に自信を持てないのはなぜ? 自分を受け入れるための心理学

外見への自信はその人の置かれている状況によるもの!?

ルックスに自信を持てる人、持てない人。その違いは、幼少期の体験や周囲の環境に左右されるといわれています。一般的に、心理学の実験で数万人もの顔写真を合成した平均に近い顔(平均顔)のことを、整った顔=美男美女と定義しています。しかし本人の主観的な自信度は、実際にこの平均顔に近いかどうかということよりも、周囲からの扱われ方や言葉がけによって変わる面が大きいのです。

たとえば、誰が見ても非の打ちどころのないような美男美女であっても、モデルや俳優の仕事をしている人の中には、「自分はルックスに自信がない」と思っている方が少なくありません。傍から見れば美しいはずなのに、主観的には「自分はイケてない」と思い込んでしまう方もたくさんいます。

これは職業上、担当するブランドや役柄に合わせた外見を求められるため、「もっと痩せないと衣装が似合わない」「若々しく見えない」「大人っぽく見えない」と周囲からいわれることも多いから。つまり、ルックスに対して厳しい環境に身を置いているので、自分の容姿になかなかOKを出せないのです。さらに匿名で誹謗中傷を受けたり、プライベートで馬鹿にされた経験をしたりすると、絶世の美男美女でも自分は醜いのかもしれないと思い込むようになります。

一方で、ごく一般的な容姿であっても、自分のルックスに愛情を感じている人はたくさんいますよね。人は、「かわいい」「素敵」「カッコいい」「楽しい」などと、互いに認め合う環境に身を置けば、自分の見た目に自信や愛情を持つことが出来るのです。

つまり見た目に自信が持てるか、持てないかは、実際にその人のルックスが一般的に見て、良いか悪いかではなく、環境によって簡単に左右されてしまうものなのです。ですから、職場や学校、またネット社会においても、互いをけなしあうような環境に身を置くと、自分の見た目や能力に対して自信がなくなり、対人恐怖やうつ病のリスクは跳ね上がります。

また、進学や就職、出産、転職など、人生の転機をきっかけに、自分の見た目に対して過敏になるケースも少なくありません。なかには、その過敏さが高じて、自分の見た目に対して妄想的な罪悪感すら抱いている人もいるのです。

自分自身を楽しむことが外見の自信へと繋がる

また心理学では、『自己』というものは2種類あると考えられています。ひとつは「小さな手鏡のなかの自己」。そしてもうひとつは「大きな姿見のなかの自己」。小さな手鏡に映る姿はあなただけのものですが、大きな姿見や街のショーウインドーに映る姿になると、あなたの外見はあなただけの世界だけでなく、自分は他人からどう見えるだろうかという、人から見える自己に注意が向きやすくなりますよね。このように、自己には自分の心の中に内在しているものと、心の外に外在しているものの2つがあるわけです。

私たちがルックスに自信が持てるかを考えるとき、「外在している自己」が他人にはどう映るだろうかということを考えてしまいがちです。つまり、他者から見える大きな姿見だけが気になってしまう。この偏りこそが、心を疲弊させる元凶。 よって、他人からの見え方だけではなく、「手鏡のなかの自己」を普段から大切にすることが、自分の自信を持ち、明るい気持ちになるためには必須です。

そのための身近な方法とは、いつも同じスタイルで過ごすのではなく、自分自身を楽しんで、積極的に自分の外見を変えることです。洋服や髪型、メイクなど、自分で自分の見た目を研究する。そして自己満足を得る。それは、まさに手鏡に映る自己に注意を向ける行為です。私自身としては、髪型やメイクに合わせてカラコンを使ってみたり、靴紐の色を変えてみたり、ときにはボーイッシュな格好をしてみたりなど、『人からどう見られているか』という観念を遠くに置く時間を大切にしています。

また、お互いを褒めあい承認し合う人と仲間になることも大切です。例えば、共通の趣味や好きな食べ物、憧れのアイドルが同じなど、お互いに情報交換をしていて楽しいと思えるサークルやネットのコミュニティに入ることです。ポジティブな情報交換は、お互いの気分を上昇させる行為。承認欲求が満たされると、自分の手鏡の世界に没頭することが出来ますし、何かに没頭していると「自分の姿も悪くないな」「今の自分は輝いているかも」という自信が付いてきます。

人からどう見えるかという視線も大切ですが、それだけではなく、自分自身をどう見ているかという視線も大切にしましょう。そのために、自分のスタイルをたくさん持つこと、そして自分を承認してくれる環境を探し続けること。それが自分の見た目に自信を持ち、ハッピーな気分になるための第一歩です。

さて、次回は「『見るな』といわれると見たくなる? 好奇心に基づく反発心の心理学」についてお教えします。お楽しみに!

瞳にまつわる心理学トップに戻る