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心理学者 植木理恵の瞳にまつわる心理学

心理学者 / 臨床心理士
植木理恵
vol.79 2024/12/12

落ち込んでいる人を見かけたらどうする? 上手な励まし方の心理学

まずは非言語コミュケーションを優先してみよう

皆さんは、落ち込んでいる人を見かけたらどうしますか? 人を励ますことは意外と難しいですよね。人を励ますのが上手な人には、いくつかの共通点があります。それは、(1)「声をかけるタイミングを計ること」、(2)「相手の話を共感的に聴くこと」が、最低条件として挙げられます。なぜその2つが大切かというと、落ち込んでいる人は、元気いっぱいな人よりも、現実的で冷めた考え方をするということが明らかになっているからです。認知心理学では「抑うつリアリズム」と呼ばれる現象なのですが、私たちは、ポジティブなときよりも、ネガティブなときに警戒心が強くなっているので、騙されにくく冷静に物事を判断することがわかっています。つまり誰しも落ち込んでいるときは、超・現実主義者になっているわけです。小手先の励まし言葉は通じません!

そのような心境のときに、急にこちらのタイミングで「元気出しなよ!」「頑張ろうよ!」と激励しても、相手はますます心を閉じてしまいますよね。それに、相手の話を遮って「そんなことでクヨクヨするのはおかしい」「それは考え方が偏っているよ」と論破しようとしてしまうと、ただでさえ冷めた気持ちになっている人が、「やっぱり自分は孤独だ」「世の中は冷たい」と感じてしまい、励みになるどころかより落ち込んでしまうことも…。

声をかけるタイミングを図るために、カウンセラーとしてお勧めしたいのは、焦って声掛けしようとか、上手く励まそうとせずに、まず「非言語的コミュニケーション」を優先することです。例えば、何を言うわけでもないけれど隣に腰掛けてみるとか、ただ飲み物を勧めてみるとか、ただ相手の好きそうな音楽をかけてみるといったこと。

もし、そのようなコミュニケーションですら、相手が拒んでいるようなら、寝不足だったり、頭の中が忙しい状態だったり、シンプルな理由もあって、相手側の都合が悪いときかもしれません。その場合、「励ますタイミング」は延期した方が親切だし、上手くいく確率が上がります。励まし上手はそのタイミングを計るべく、落ち込んでいる人に少し近づいたり、少し距離を置いたりするのが励まし上手な人です。

形容詞を引き出すように相手の気持ちに寄り添ってみよう

また、共感的に聞くためにお勧めなことは、相手の話を傾聴しながら、できれば「形容詞(〜イ)を引き出す」ように聞くこと。これは私自身がカウンセリングの時になるべく心がけていることですが、特にテクニカルなことではありません。「つらイね」「それは悔しイね」「悲しイ気持ちでしょうね」「それは寂し(イ)かったでしょう」というように、「心の様子」について聞こうという姿勢を持つだけでも、多くの人がだいぶ安心してくれるようです。落ち込んでいる人にとっては、「誰がどうして、どうなったの?」といった「事実関係」を整理してアドバイスするのは休んであげましょう。

ただ「気持ち」に共感するようにした方が、「この人は聞いてくれる!」という安心感を得やすいですよね。その流れで、じゃあ「今を乗り越えたら」「休みになったら」、「どんな良いことがあなたには待っている?」「どんな達成感が味わえそう?」などと、具体的で前向きなビジョンに話を持って行くと、(特に物事が何も解決しなくても)「聞いてもらえた」「励まされた」「すっきりした」と思ってもらえることが多いようです。

日本人は昔から、「為せば成る」「石の上にも三年」といった美しい努力・根性論を好みがちですよね。でも落ち込んでいる人を励ますときには、前述の心理学に基づく心がけが役立つことも多いように思います。

さて、次回は「大人になっても楽しもう! 絵本にまつわる心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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vol.79 2024/12/12

落ち込んでいる人を見かけたらどうする? 上手な励まし方の心理学

まずは非言語コミュケーションを優先してみよう

皆さんは、落ち込んでいる人を見かけたらどうしますか? 人を励ますことは意外と難しいですよね。人を励ますのが上手な人には、いくつかの共通点があります。それは、(1)「声をかけるタイミングを計ること」、(2)「相手の話を共感的に聴くこと」が、最低条件として挙げられます。なぜその2つが大切かというと、落ち込んでいる人は、元気いっぱいな人よりも、現実的で冷めた考え方をするということが明らかになっているからです。認知心理学では「抑うつリアリズム」と呼ばれる現象なのですが、私たちは、ポジティブなときよりも、ネガティブなときに警戒心が強くなっているので、騙されにくく冷静に物事を判断することがわかっています。つまり誰しも落ち込んでいるときは、超・現実主義者になっているわけです。小手先の励まし言葉は通じません!

そのような心境のときに、急にこちらのタイミングで「元気出しなよ!」「頑張ろうよ!」と激励しても、相手はますます心を閉じてしまいますよね。それに、相手の話を遮って「そんなことでクヨクヨするのはおかしい」「それは考え方が偏っているよ」と論破しようとしてしまうと、ただでさえ冷めた気持ちになっている人が、「やっぱり自分は孤独だ」「世の中は冷たい」と感じてしまい、励みになるどころかより落ち込んでしまうことも...。

声をかけるタイミングを図るために、カウンセラーとしてお勧めしたいのは、焦って声掛けしようとか、上手く励まそうとせずに、まず「非言語的コミュニケーション」を優先することです。例えば、何を言うわけでもないけれど隣に腰掛けてみるとか、ただ飲み物を勧めてみるとか、ただ相手の好きそうな音楽をかけてみるといったこと。

もし、そのようなコミュニケーションですら、相手が拒んでいるようなら、寝不足だったり、頭の中が忙しい状態だったり、シンプルな理由もあって、相手側の都合が悪いときかもしれません。その場合、「励ますタイミング」は延期した方が親切だし、上手くいく確率が上がります。励まし上手はそのタイミングを計るべく、落ち込んでいる人に少し近づいたり、少し距離を置いたりするのが励まし上手な人です。

形容詞を引き出すように相手の気持ちに寄り添ってみよう

また、共感的に聞くためにお勧めなことは、相手の話を傾聴しながら、できれば「形容詞(〜イ)を引き出す」ように聞くこと。これは私自身がカウンセリングの時になるべく心がけていることですが、特にテクニカルなことではありません。「つらイね」「それは悔しイね」「悲しイ気持ちでしょうね」「それは寂し(イ)かったでしょう」というように、「心の様子」について聞こうという姿勢を持つだけでも、多くの人がだいぶ安心してくれるようです。落ち込んでいる人にとっては、「誰がどうして、どうなったの?」といった「事実関係」を整理してアドバイスするのは休んであげましょう。

ただ「気持ち」に共感するようにした方が、「この人は聞いてくれる!」という安心感を得やすいですよね。その流れで、じゃあ「今を乗り越えたら」「休みになったら」、「どんな良いことがあなたには待っている?」「どんな達成感が味わえそう?」などと、具体的で前向きなビジョンに話を持って行くと、(特に物事が何も解決しなくても)「聞いてもらえた」「励まされた」「すっきりした」と思ってもらえることが多いようです。

日本人は昔から、「為せば成る」「石の上にも三年」といった美しい努力・根性論を好みがちですよね。でも落ち込んでいる人を励ますときには、前述の心理学に基づく心がけが役立つことも多いように思います。

さて、次回は「大人になっても楽しもう! 絵本にまつわる心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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