道端に咲いている花を見て、ホッとしたり、旅先で雄大な自然に囲まれて、エネルギーが湧いてくるのを感じたりすることってありますよね。自然に触れることで私たちの心は元気になる。これは誰もが経験的に知っていることだと思います。実際に森林へ入って深呼吸をすると、血圧が下がり、筋肉の緊張がほぐれ、痛みも減じるという調査結果も報告されています。心理的には、自然に抱かれていると自己内省が強くなりますね。つまり、「今、ここにある私」という感覚が研ぎ澄まされやすくなった結果、安心感を得られます。そのため瞑想体験や心理セラピーを味わうときは、都会のビルの片隅で行うよりも森の中で行った方が、遥かに深い自己洞察に達する効果があるでしょう。
何故そうなるのか、理由は2つ考えられます。1つは、大きな波の音や飛び立つ鳥の群れ、周囲を包み込むような夕焼けなどの圧倒的な自然と向き合いながら、「次回のコンペは断られるんだろうな(先読み)」「夫は私のことをバカにしている(心の読みすぎ)」「子どもが反抗期になったのは私のせい(自己関連付け)」といった、メンタルヘルスを悪くする考え方を同時進行させるのは、極めて難しいことだからです。自然は日常の苦しみを一気に遠くに置き、一旦避難をさせてくれる効果があるようです。
ちなみに深層心理学的には、自然と触れると自分は孤独なのではなく、自分も世界の一部なのだという安心感を得られることが指摘されています。たとえば重病の患者さんが、壁に囲まれた病室でずっと過ごしていると、自分の不調ばかりを感じて、気が滅入ってしまいます。ですが、日の当たる公園に散歩に出たり、病室で好きな鉢植えを育てたりということを入院生活に取り入れてみると、無意識に「自分はひとりではなく、この自然の植物と同じ大きな生命体と繋がっている(生き物はいつか命の終わりが来るが、それは自分ひとりだけではない)」という原初的な感覚を体験できるようになり、穏やかな心で過ごすことに繋がると考えられています。
また心身の疲労を取るには、4つの休息が有効だとされています。(1)Rest(休む・眠る)、(2)Relax(くつろぐ)、(3)Recreate(スポーツなど好きなことを楽しむ)、そして、(4)Retreat(リトリート=非日常の中で、静養すること)です。(1)(2)(3)は多くの人が一般的に行っていることで、日常生活の中で自分の心身を休ませたり、楽しませたりする「能動的な休息」を指します。しかし、(4)はより「積極的な休息」を表します。海や川、山までわざわざ移動して、転地療法のように24時間自然の中に身を置く。そして「これまでの自分・これからの自分・人への感謝」といった瞑想にどっぷり浸かり、自然パワーをフル充電してから、また普段の生活へと帰ってくることです。
忙しくてそんな時間はないという場合は、自宅で観葉植物を育ててみたり、小さな魚を飼ってみたり、公園を散歩したり、望遠鏡で星空を眺めたりするなど、意識的に自然との距離を縮めることでもリトリートの効果があります。シンプルなことですが、大きな効果がありますので、是非取り入れてみてください。
Photo by pixta
さて、次回は「人が目をそらすのはなぜ? 視線回避の心理学」についてお教えします。お楽しみに!
道端に咲いている花を見て、ホッとしたり、旅先で雄大な自然に囲まれて、エネルギーが湧いてくるのを感じたりすることってありますよね。自然に触れることで私たちの心は元気になる。これは誰もが経験的に知っていることだと思います。実際に森林へ入って深呼吸をすると、血圧が下がり、筋肉の緊張がほぐれ、痛みも減じるという調査結果も報告されています。心理的には、自然に抱かれていると自己内省が強くなりますね。つまり、「今、ここにある私」という感覚が研ぎ澄まされやすくなった結果、安心感を得られます。そのため瞑想体験や心理セラピーを味わうときは、都会のビルの片隅で行うよりも森の中で行った方が、遥かに深い自己洞察に達する効果があるでしょう。
何故そうなるのか、理由は2つ考えられます。1つは、大きな波の音や飛び立つ鳥の群れ、周囲を包み込むような夕焼けなどの圧倒的な自然と向き合いながら、「次回のコンペは断られるんだろうな(先読み)」「夫は私のことをバカにしている(心の読みすぎ)」「子どもが反抗期になったのは私のせい(自己関連付け)」といった、メンタルヘルスを悪くする考え方を同時進行させるのは、極めて難しいことだからです。自然は日常の苦しみを一気に遠くに置き、一旦避難をさせてくれる効果があるようです。
ちなみに深層心理学的には、自然と触れると自分は孤独なのではなく、自分も世界の一部なのだという安心感を得られることが指摘されています。たとえば重病の患者さんが、壁に囲まれた病室でずっと過ごしていると、自分の不調ばかりを感じて、気が滅入ってしまいます。ですが、日の当たる公園に散歩に出たり、病室で好きな鉢植えを育てたりということを入院生活に取り入れてみると、無意識に「自分はひとりではなく、この自然の植物と同じ大きな生命体と繋がっている(生き物はいつか命の終わりが来るが、それは自分ひとりだけではない)」という原初的な感覚を体験できるようになり、穏やかな心で過ごすことに繋がると考えられています。
また心身の疲労を取るには、4つの休息が有効だとされています。(1)Rest(休む・眠る)、(2)Relax(くつろぐ)、(3)Recreate(スポーツなど好きなことを楽しむ)、そして、(4)Retreat(リトリート=非日常の中で、静養すること)です。(1)(2)(3)は多くの人が一般的に行っていることで、日常生活の中で自分の心身を休ませたり、楽しませたりする「能動的な休息」を指します。しかし、(4)はより「積極的な休息」を表します。海や川、山までわざわざ移動して、転地療法のように24時間自然の中に身を置く。そして「これまでの自分・これからの自分・人への感謝」といった瞑想にどっぷり浸かり、自然パワーをフル充電してから、また普段の生活へと帰ってくることです。
忙しくてそんな時間はないという場合は、自宅で観葉植物を育ててみたり、小さな魚を飼ってみたり、公園を散歩したり、望遠鏡で星空を眺めたりするなど、意識的に自然との距離を縮めることでもリトリートの効果があります。シンプルなことですが、大きな効果がありますので、是非取り入れてみてください。
Photo by pixta
さて、次回は「人が目をそらすのはなぜ? 視線回避の心理学」についてお教えします。お楽しみに!