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vol.6 2018/11/12

左よりも右にいる人の方が魅力的に見える? 視線の動きにまつわる心理学

視線は左から右へ動く

デパートやスーパーマーケットで買い物をするとき、私たちは左から右へと商品を眺めていく傾向があります。洋服でも本でも、左側にディスプレイされているものから、順々に見て歩くわけです。

この傾向は男女・国籍・利き腕などにかかわらず、押しなべて多くの人に見られる行動と言われています。視線は左から右へと動く。今回は、この法則を日常生活に活かす方法をお教えします。

記憶の心理学では、古くから「初頭効果」と「親近効果」という現象が有名です。簡単に言いますと、人は最初に見たものと、最後に見たものを記憶に刻むということ。たとえば小説の場合、出だしと結末だけをよく覚えている。ビジネスの場合、最初の挨拶と帰り際のやりとりを覚えている。恋愛の場合、初恋の相手と最後の恋人をいつまでも忘れずにいる。というような記憶の法則があります。

この記憶の法則と、「左から右へ」という視線の傾向を合わせて考えてみましょう。すると、私たちは一番左に展示された商品と、一番右に展示された商品を印象深く思うことになります。一番左は最初に見るもの、一番右は最後に見るものですから。

では、その「最初に見るもの」と「最後に見るもの」のうち、より印象的、魅力的に映るのはどちらでしょうか?

このことを、心理学者のニスベットらは次のように実証しています。彼らは、実験のためにストッキングを左から右へズラリと吊るして様々な年齢の女性に、もっとも質の良いストッキングはどれだと思うか選んでもらったのです。

とはいえ、実は並べてあるのはすべて同じ品質のストッキング。つまり、被験者は「私はこれが一番だと感じる」と主観によって判断するだけで、実際にはその差はまったくありません。

さて、このイタズラのような実験は、実に明確な結果を出しました。それは、ほとんどの女性が、一番右のものを選んだということ。次点は一番左のものでしたが、その差は大きく開きました。最初に見たものよりも、最後に目にしたストッキングこそが一番素晴らしいと判断したのです。

一番左と一番右が高い評価を受ける。さらに右側のものはより魅力的だと感じられる。確かにこの仮説は証明されたわけです。しかし、それにしても、どうして多くの被験者が、左のものではなく一番右のものを選んだのでしょうか。

これには、関心の度合いという要素を入れて考える必要があります。簡単に言いますと、人はもともと関心の高いものに関しては、最後の「しめ」や「オチ」をよく記憶しますが、あまり関心のないものに関しては、最初の「ツカミ」や「インパクト」を記憶するということです。多くの女性にとって、ストッキングの品質は関心の高いものに入ります。ですから、この実験ではとくに一番右側のもの、最後に目にしたものが高評価を受けたのでしょう。

自分が選ばれるためには、どう動く?

視線は左から右へ動く。関心の高いものは右(最後)、関心の低いものは左(最初)を記憶し、それで評価が左右される。重要なプレゼンの場合、最後に出した情報のほうが魅力的に思われるということ。また合コンの場合には、一番右に座っている人がモテる確率が高まるということになります。

例外的に、相手がほとんど無関心なことに関しては一番左がよいわけですが、商談相手や恋愛対象に「全然関心がない」というシーンはほとんどないのではないでしょうか。つまり、相手の気を引きたいと思う事やものは、基本的には一番右に置くのが鉄則といえます。相手の関心度がわからないときは、一番右と、一番左の両方に置くと盤石ですね。

よって、少なくとも目玉商品を中途半端な位置にディスプレイしたり、あなた自身が人の間に座ったりするのは、印象にとどまりにくいので大損です。視線の動きと魅力度。この二つを結び付けて、一番右を意識しながら日々過ごしてみてください。魅力度アップにつながる確率は、きっと高くなるはずですよ。

さて次回は、「人とより親密になるコミュニケーションとは? ジョハリの窓の心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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