vol.53 2022/10/07

環境を整えるのがカギ! 集中力を高める心理学

集中力の維持に、元々の性格や性別などは一切関係ない

「今日こそ、この仕事をやっつけるぞ!」と思って取り掛かったものの...あっという間に他のことに気が移ってしまっている。気づいたらスマホをいじっていたり、インターネットで検索をしていたり。そのような悩みを持っている方は意外に多いようです。集中力のある人とない人。それは一体、何によって左右されるのでしょうか。元々の性格から?IQの高さ?性別の違い?...いえいえ、実は、それらは集中力とあまり関係がありません。心理学上で、集中力を左右するのは、あくまでも環境の要因だということがわかってきました。環境さえ変えれば、集中力は持続出来るのです。

たとえば、米・ハーバード大学(2018年)で行なわれた実験で「(A)スマホが手元にあって、すぐに触れる環境」と「(B)スマホが実験者によって没収されている環境」で課題をこなす状況を比べた場合、どんなに優秀な学生でも、単に(A)の環境にいるだけで課題への取り組みは長く続きませんでした。反対に、元々の優秀さや意欲は関係なく、(B)の環境に置かれただけで学生は気を散らさずに、最後まで課題を終了することが出来たのです。

この研究によると、仕事への集中力をアップするにはとりあえず部屋からスマホを撤去し、また仕事とは関係のないインターネットやゲームなども使えない環境を作り込む...これが、何よりも重要なことになってきますね。本人にどんなに意欲や才能があっても、目に映ってくるものがその集中力を引っ張ってしまうわけですから、とにかく気を散らせるものは視野の中に入れない。そんな環境作りが大事になるわけです。

人はシンプルな部屋にいると集中出来る

さらに「無意識のうちに目に入り込む情報によっても、人の集中力は簡単に左右される」ということも明らかにされてきています。たとえば、米・スタンフォード大学(1999年)の実験によると、社内で会議をしているメンバーの集中時間を測定したところ「(A)カラフルな色の会議室」よりも「(B)白い壁やブルー系の会議室」の方が、集中力が持続することが指摘されています。また同大学は、カラフルでゴチャゴチャとした雰囲気の部屋にいると「人のクリエイティビティは高くなるが、その一方で集中力は持続しにくい」という法則についても指摘しています。確かに、クリエイティビティ(発想・創造)という面から考えると、まわりにいろんな刺激があった方が考える手掛かりが多くなるので新しいアイデアが浮かびやすくなりますよね。けれど、その状態を長く持続させる(=集中力を保つ)ためには、それらの刺激がかえって邪魔になってしまう。なかなか難しいものですね。

つまり、新しいことを企画したり、アイデアをどんどん広げたりするには、いろいろなものが目に映る環境(=移動中や賑やかなカフェ、資料がたくさんある部屋など)の方が適していますが、物事を文章化したり体系立てて考えたりするなど、頭の中を整理整頓し集中するための環境はシンプルに仕事だけができる部屋、ひとりで物事を考えられる場所、静かで目移りするもののない環境が必要になってくるということ。

このように、もしあなたに集中力がないとしたら、それはあなたのせいではなく単に環境が整っていない可能性大なのです。ですから、ひとつの場所で悩むのではなく「ここで自分の頭は働きやすいかな?」ということを、場所を変えながら試してみることをオススメします。自分の中に秘められていた意外な集中力や発想力が見つかって、きっと仕事が楽しくなりますよ。

さて、次回は「苦手な人を好きになるには相手のどこを見ればいい? 人間関係の心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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