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vol.52 2022/09/09

老若男女に人気のSNSが楽しいのはなぜ? 観察者効果の心理学

24時間365日、世界中の人と交流出来る

「これ、知ってる?」「あれ、すごくない?」と反応を確認したり、自分の何気ない情報を発信するためには、いまやSNSが欠かせませんね。特に若い人にとっては最も重要なツールといっても過言ではありません。電車やカフェ、信号待ちでも、多くの人々が外の世界を遮断して、手元にあるSNSの世界に入り込んでいるようです。

私の学生時代はそんな便利なものはなかったので、友達同士で「このゲームもうやった?」「良かったらこの漫画貸してあげる」という交流だけで、SNSのように見知らぬ世界との繋がりはほとんどありませんでした。しかも「楽しかった!○○さんにも貸していい?」「私にはここがちょっと難しかった。今度この箇所教えて」など、当人に電話(まだ電話が一家に一台しかなかった時代...)で聞いたり、手紙やカードをこっそり交換したり...と、今思えば「深く閉じた」性質の友情だったと思います。

しかし、今はその頃とは様変わりしていますね。SNSに個人的な投稿をアップすることで、元々の知り合いだけでなく見知らぬ人にも見てもらえる。普段は会釈だけだったパパ友・ママ友、はたまた遠い外国の少年少女、そして長く入院しているご年配の方や小さな子ども、もしかしたら、はるか異国の寺院で修行したり、宇宙で孤独に研究されたりしている方々も、あなたがアップした動画を見て、クスっと笑っているかも!?...想像は尽きません。

このようにSNSの持つ大きな特徴は、今まで個人的にしかやりとり出来なかったことを、世界中の人に一気に公開出来る、すぐに繋がりが出来るというところにあるようです。しかし私は、そういった「便利さ」「使いやすさ」だけでは、ここまでSNSは流行らなかったかもしれないと思うのです。実は、心理学的に考えてみると、SNSに夢中になっている人には「観察者効果」という、ある種の独特な刺激的感情が、常に付き纏っている状態に感じ取れます。そうなると、一度手にしたら手放せないものになってしまうのではないでしょうか。

自分が注目されていることがわかるとモチベーションが上がる

「観察者効果」とは、1927年から1932年、アメリカ・シカゴにあるウェスタン・エレクトリック社で行われた「ホーソン工場実験」にて確認されました。工場内に研究者が入ることによって、労働者たちは自分たちの働きが注目され関心を持たれていると意識して、モチベーションがグンと上がり、一気に仕事の生産性が向上したのです。仕事場の環境や賃金はもちろん大切ですが、人はパンのみにて生くるものにあらず。「自分の仕事はちゃんと注目されている」と、働く人が心から思えることが大切なのでしょう。またオーストラリア出身の精神分析学者であるハインツ・コフートはこの基盤心理を「社会的貢献関与」と呼びました。

「大丈夫ですよ」「いつも見ていますよ」と感覚を常に与えてくれるという点においては、リアルの人間よりもSNSの方がずっと上手ですね。何を書いても、真夜中でも、「いいね!」というコメントが返ってくる。ちなみに、これが「いいね!」ではなくて、あなたへの反論であっても、あなたへの関与関係には代わりはありません。むしろ、いわゆる「バズった」「炎上した」という報酬として、あなたに返ってくることもありますよ。ちなみに、あなたはご家族や同僚、友人に、このSNS方式をどのくらい取り入れているでしょうか。「あなたのことをちゃんと見ているよ」というメッセージを、リアルの現実でもきちんと伝えてあげること、それが自己肯定感・自己承認欲求・モチベーションアップに繋がり、お互いの関係を良くする秘訣だと思います。

昨今、SNSは「姿勢や目が悪くなる」「いじめや誘拐などの温床になる」といった負の側面ばかりが注目されています。確かにそれは由々しき事態ですが、では「なぜSNSは私たちにとって楽しいのだろうか」と思いを巡らせて、良い面を取り入れるような考えにシフトすることも大切かもしれませんね。

さて、次回は「環境を整えるのがカギ! 集中力を高める心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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