vol.10 2019/03/11

春の新生活にむけて! 第一印象にまつわる心理学

初対面の印象は相手の記憶に長くとどまる

春は進学や就職、転勤、それに伴う引っ越しなどが一年で最も多くなるシーズン。また、習い事など新しいことにもトライしたくなりますね。つまり、春は出会いが重なる時期。そのようなときに気になるのが自分自身の第一印象です。

過去の研究でも、初対面の記憶は長くとどまり、しかも一度定着してしまった印象を後で大きく覆すのは難しいということが実証されています。つまり、挽回の余地が少ないというわけです。ですから、皆さんが第一印象を気にするのは正解だといえます。

心理学者のアッシュは、挽回の余地が少ないのみならず、「最初の印象が良ければ後々も不当に高く評価されるが、最初の印象でつまずけば、後々も不当に低い評価を受け続ける」という初頭効果という現象を見出しています。

つまり、人間は第一印象だけで相手の能力や性格をずーっと決めつけてしまう。いわば偏見なのですが、そういうクセがあるのが難解ですね。

さらに米・ハーバード大学のグループをはじめとして、近年の印象研究者のほとんどが、「目の前の人を好きか嫌いかという直観的感情は、初対面のときに心が決めてしまう」という傾向を指摘しています。このような野性的なジャッジメントを知らず知らずに行っている可能性があるのです。

それでは、どうしたら初対面の相手に好印象を持ってもらえるのでしょうか。それには実にいろいろな要因が必要なのですが、このコラムでは視線にまつわる心理をクローズアップしていきましょう。

初対面の相手に対して、見ているところが男女で違う!?

百聞は一見にしかずというように、メールや電話も大切ですが、やはり本人と直に会ったときの印象が一番重要です。人は初対面の相手のどこを目で追い、そしてどんな判断をしているのでしょう。

近年の精巧なコンピュータやAIを駆使した研究では、人はまず相手の目を見て、次に口や顎を見るという傾向が、人種を越えてかなり大きいことを示しています。これは男女ともに同じです。しかし、目から口元と視線を動かした後は、男女でまったく違うところを見ていることが明らかになったのです。

男性は、男女問わず初対面の相手には、視線を目から口元へ移し、口元の次はまた目に戻ります。そしてまた口元から目と往復を繰り返す人が多かったのです。ときおり耳や頬や鼻、喉、髪など、視線は微細な動きを繰り返しますが、視線は基本的に顔周りからあまり遠く離れません。

そして微細な動きを続けながらも、やはり結局は目に視線が戻ります。男性は、いわゆる目力やひきしめた口元などから相手の意欲や正義感を読み取ろうという気持ちが強いのかもしれません。あとで追跡調査をすると、男性の82%が相手の顔と髪型は詳しく思い出せますが、それ以外の個所は記憶がおぼろげでした。

それに対して、女性の視線の動きはダイナミック。相手は男女問わず目から口元と一通り目を置いたら、すぐに上半身を忙しく目で追います。たった5、6秒の間に、胸やお腹、洋服の襟や爪などに至るまで忙しく目を走らせるのです。

上半身を見たらまた視線を戻し、しばらくはまた顔全体を見ているのですが、しばらくたつとまた瞳が体のほうに動き始めます。今度は胸から足元、そして顔から足元という繰り返しを始めます。けっこう瞬時に瞳を動かすものですね。

とはいっても、これはコンピュータの精密分析の結果なので肉眼で見ると、ほんの少しだけチラッと黒目が揺れているかなという程度。ですから、気づかれないスピードではありますが、とにかく、女性は顔周辺にとどまらず、相手の全身に視線を配らせながら話をしていることになります。

やっぱり女性は初対面の相手を隅々まで見ている!!

...この話、女性にとってはにわかには信じられない話なのでは?私自身も以前から男女にそこまで違いが出るものなのかという疑念を抱いていました。

そこで数カ月前、これと同様の実験を被験者になって受けてみました。何人かの初対面の男女と10分間話をするのですが、もちろん相手の顔を見ながら話していたつもりです。ところが、これは「つもり」だったわけです。

後日、結果を入力されたデータを見ると、相手の頭から足までを不躾なくらいにチラチラ見ながら話を聞いているシーンが多く、愕然としました。かなり微細な動きとはいえ、相手が身につけているものや靴、爪、体格に至るまで、落ち着きのない視線で追っているのです。自分では気づいていなかっただけにかなり驚きました。

これで重要なことがわかりましたね。第一印象のとき相手はどこを見ているか。それは男女でかなり異なるということです。男性は、人の顔や髪型や表情からインスピレーションを受けようとします。ということは、もしあなたが今度初めて会う人が男性ならば、ぼんやりした目元はNG。前夜に飲みすぎて顔がむくんだり、瞳に充血が残ったりしないようにしましょう。また眼鏡を使用している方は、コンタクトレンズを着用した方が目元がはっきりするので、相手にあなたの印象を残しやすいですね。髪型も目を覆ってしまうようなスタイルは損をするでしょう。さらに口にも笑みを絶やさないようにするのがベターです。

繰り返しになりますが、男性は長時間、目や顔周辺ばかりを追います。そしてそこに強い意志ややる気が表れるものと信じているのです。だとしたら、洋服選びに時間をかけるよりも前向きな表情や明るい笑顔を作ることに専念するべきですね。就職の面接ならそのひと工夫で男性面接官に前向きな印象を与える可能性が高まります。

初対面の相手が女性という場合は、顔の表情のみならず、全身に注意を払う必要があります。女性はセンスの良し悪しは一切関係なく、自分らしいオシャレにトライしている人に対して社会的IQを高く見積もる傾向があります。よってオシャレに配慮している人は、社会性・社交性・好奇心が大きく、そしてメンタルの健康も優良であると多くの女性は認識しています。さらに女性は、初対面の相手が男性であっても、女性であっても、姿勢にも割と長めに視線を送ることが明確になっています。

女性は男性に比べれば、一般的に体が小さく、力が弱いと言うこともあって、良い意味で健全な依存性を持っています。ですから、相手の姿勢やたくましさといった身体性を無視することはできないのかもしれません。つまり、初対面の女性と会うときのNGは、メイクやヘアスタイルをばっちり決めていても、首から下がだらしないファッション。この場合、第一印象は悪化していきます。顔以上に大事なのは、パリッとしたシャツ、そして清楚さと誠実さを連想させるようなジャケットを選ぶこと。もちろん靴もほとんどの女性は目を配らせますから、磨いておいた方が良いですね。

視線と第一印象。同じように初めましての挨拶をかわしているようでも、男性と女性ではそもそも互いに見ているところが違うのだということを、今日から少し意識してみてください。あなたの第一印象がずいぶん変わると思いますよ。

さて次回は、「出会いの季節に! 緊張せずに話すための心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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