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vol.12 2019/05/13

モノを覚えるコツって!? 視覚を使った記憶力UPの心理学

記憶力は頭の良し悪しではない!?

仕事でびっしりと文字が書かれた資料や企画書などを「ちょっとこれ、読んでおいて」と渡されたとき。すんなり頭にインプットできるタイプと、見ただけでお手上げになってしまうタイプの方がいますよね。しかし後者の方、あきらめてはいけません!

実はこの差は国語力や言語IQの違い、つまり頭の良し悪しから端を発したものではなかったのです。では、何がこの明暗を分けているかというと、心理学では次の2つのことが実証されてきています。

まず1つ目ですが、文章の記憶や理解が苦手な人ほど、内容がわからなくなったらその前の行やページに戻って、もう一度読み直す習慣があることがわかっています。一見その方が記憶力や理解度がアップしそうですが、実はその逆の習慣がある人の方が、書かれていることの全貌をより早く記憶できることがわかってきたのです。

つまり、わからない箇所があってもバッサリ読み飛ばして、文章の全貌を写真のように自分の目に写し込んでしまう。そして視線を前の文に戻すことなく、最後まで一気に読む。その後で、もう一度初めからサッと読み返す。

後戻りを繰り返しながら四苦八苦して読んだ被験者よりも、視覚的全貌を頭に写し込んでから読み返した被験者の方が、おおまかな内容が絵のように視覚で整理され、スムーズに理解ができたり、記憶ができたりすることが2010年マサチューセッツ大学、2014年ニューヨーク市立大学などの研究で実証されています。

ツッコミを入れながら文章を読む

2つ目は、文章をちょっと上から目線で読むことです。たとえば「ここは私だったらこう書くけどね」「こんなこと書くからわかりにくい」「自分なら結論をもっと頭にもってくるのに」など、自分のことは棚に上げて、心の中でその文章にツッコミやダメ出しをしながら読むことです。

なんだかちょっとイヤな奴に聞こえるかもしれませんが、これは記憶の心理学で重視されている「メタ・セルフモニタリング(俯瞰的な自己観察)」という方法。この効果はかなり大きいことがわかっています。

ただ素直に資料や長文を読むのは、受け身の姿勢です。心が受け身であるとき、人は深い記憶ができません。理解する力も小さくなることが心理学の研究でわかっています。しかし「自分だったらこう書くけど」とクリティカルに頭を巡らせながら読むのは、とても能動的な読み方です。人は心が能動的、つまり前のめりで少し攻撃的なときは、記憶力がアップするのです。

ビジネス的な文章を読むときに、目を泳がせるばかりでわからない・覚えられないと苦しむのは、今日で卒業しましょう!最初はわからないことがあっても読み飛ばし、最後まで一気に読み進める。そして、全体を視覚に写し込んだところで、もう一度、サラッと上から目線でツッコミを入れながら読んでみてください。読書をゆったりと楽しむのとは、また違った視線を意識することで、仕事の効率がアップしますよ。

さて次回は、「仕事に効く! 相手の興味を引くための心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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