vol.13 2019/06/10

仕事に効く! 相手の興味を引くための心理学

画像やデータはプレゼンに効果的ではない!?

あなたは、仕事でプレゼンをするときに、グラフなどのビジュアルを使いますか?また家族や友達に旅行先での出来事を伝えるとき、写真や動画を見せながら話しますか?これは多くの方が、YESと答えるようです。

百聞は一見にしかずと言うように、口で説明するよりもデータ資料や動画を見せた方が、聞き手はこちらに視線を向けてくれますね。また、注目を浴びると場が盛り上がっている気がして、安心してプレゼンができます。しかし、この視覚情報でインパクトを与えるという方法、いつも良い事ばかりではないのです。

というのも、最初から最後までデータ資料や動画で説明された人は、そのときには面白い話を聞いた気がしても、なんと1時間後には説明内容の半分以上を忘れているということが心理学の研究で判明したのです。

つまり、むやみにデータ資料を使用するのは、要注意。場合によっては、単にその場が盛り上がるだけで、本質的に相手へアピールできていないことがあるからです。

カナダ大学では、2001年に次の3つのプレゼンの仕方を比較し、聞き手の記憶に残るプレゼン方式を調査しました。

(1)データ資料を使わずに、最後まで口頭で説明するグループ
(2)グラフなど、一部はデータ資料をビジュアルで見せるが、それ以外は口頭だけで説明するグループ
(3)ずっとデータ資料を提示しながら説明を進めるグループ

さて、この3つのうち、どのグループの評価が最も高かったのでしょう。結論から言いますと、聞き手が3日後、5日後、1週間後...と、いつまでもプレゼン内容を記憶にとどめていた順位は、(3)<(2)<(1)の順であることが分かったのです。

つまり、最初から最後まで口頭で説明したグループが、長い目で見ると効果的なプレゼンができ、相手の心を射止めやすいということ。ずっと資料を提示しながら淡々と説明をすると、その内容は短時間しか印象に残らないということです。

また実験で、プレゼンした商品が欲しくなったか?という質問をしてみたところ、(1)のグループが圧勝だったと言うから驚きです。

わかりすぎない方が興味は持続する!

これは、聞き手の2つの心理が原因となっていると思います。1つ目は、「説明だけなの?もっと詳しく知りたい。彼(彼女)の話を聞きたい」=わからないという未完結感に訴える心理です。実は、物足りないという感覚は悪いことではなく、かえって興味を引き、心理的に忘れられなくなるものなのです。おそらく(1)のグループには、質問がたくさん出たでしょう。これは聞き手が興味をもったという証しです。

2つ目は、他のグループがグラフなどのデータ資料に頼って説明している中、(1)のグループはずっとこちらに顔を向けて、聞き手の目を見ながら話すという態度。これは希少性があります。只者ではない自信の表れを察知し、彼(彼女)の話は真実味があると感じられます。ですから、できたらデータ資料などを使わずに、あくまでも私が話すので、こちらに目を向けてしっかり聞いてくださいと言うくらいの気構えで、プレゼンすることが大切なわけです。

ちなみに、私は1000人を超える講演会や授業が日常茶飯事ですが、データ資料は使いません。見ぶり手ぶり、声の強弱と話の組み立てだけで、最後まで講義を進めます。その方が、聴講者が集中して話を聞いてくれることを知っているからです。そして、いつでも聴講者からの質問を受け付ける形式をとっています。この方式の反応は、とても良好なようです。

皆さんも学生時代に覚えがあると思いますが、あらかじめ先生が用意している資料を読み上げたり、データ資料を順繰りになぞったりするような授業は、ほとんど内容を記憶していないでしょう。つまり、もっとも相手の記憶に内容が残る効果的な方式は、多少下手でも良いから自分の言葉で話し通す。これは明確な事実なのです。

とはいえ、急にデータ資料を使うのをやめろと言われても、現実的にはかなりの勇気がいること。でも、安心して下さい。そんな方へ効果的にデータ資料を使う方法もお教えします。それは「前半はデータ資料を使い、後半は自分の言葉だけで話す」という方式です。

心理学では初頭効果と言いますが、人は、最初の情報によく注目するという傾向があります。ですから、プレゼンの前半は、重要となるデータや画像を、ビジュアルで明確に見せるのが良いでしょう。しかし、ここで重要なのが、いつまでもそれを続けないということ。後半になったら部屋の明かりをつけて、聞き手に対して目を向け、自分の言葉で話してください。

「今見せたグラフのような現状だから、今後どんな新展開を考えているのか?」「問題点はどこにあり、それをどう打開できると自分は思っているのか?」といった今後の対応策や展望は、あなた自身で語った方が、聞き手の興味はずっと長く続きます。そこまでデータ資料を用いて機械的にやってしまうと、あなたの話は永久に覚えられません。

最初の半分で、ビジュアルを効果的に使えていれば、それはもう相手の短期的記憶に入っているのです。その状態で後半はあなたの言葉で、あなたの考えを自信を持って話す。このプレゼンの流れが、相手の記憶に強く訴えかける方法に違いないと思います。

漫然とデータや動画を見せ続けたり、資料を読み上げたりするだけのプレゼンは少しずつ卒業していきましょう。それが同僚や先輩から大きく抜きんでる、優秀なビジネスパーソンへの近道です。

さて次回は、「上手な瞑想法を伝授!イライラをしずめる心理学」についてお教えします。お楽しみに!

瞳にまつわる心理学トップに戻る