vol.14 2019/07/16

上手な瞑想法を伝授! イライラをしずめる心理学

頭の中でイメージするだけで、イライラが軽くなる!?

ストレスフルな職場を辞め、苦手な人とは全員縁を切り、美しい風景の外国をしばらく旅して巡る。そんなことができたら、イライラした気持ちをリフレッシュできるでしょうね。でも、現実は簡単にはできません。

現状を変えられないとき、あなた自身にできることは2つあります。ひとつは、趣味やスポーツに集中したり、自己メンテや美容に力を入れたり、愛するペットに癒されたりするなど、あなたの気分が良くなることに没頭すること。そのために日頃からあなたのイライラを薄めてくれるもの、ことの数を増やしておくと良いですね。そしてもうひとつは、イライラした気持ちが溜まってしまっても、それを爆発させずに平常心へ戻せるような強い心を手に入れることなんです。

平常心に戻りやすい強い心は、実は瞑想によって鍛えられることが科学的にも明らかになっています。1932年ドイツの精神科医シュルツは、ストレス緩和や心身症、神経症などに自己催眠法が有効であることを見出し、それが日本の禅宗の精神統一の考え方と相まって、瞑想として世界中に広まっていきました。これは専門的には、自律訓練法といって、文字通り自分の自律神経をコントロールする方法を覚えることを目指すものですが、今回は、自宅や会社、電車の中でもできるように簡易な瞑想の方法をご紹介します。

人はリラックスしていないとき、足の裏や首筋など、体のどこかが冷たいと感じています。そして、それとともに、まるで体が宙に浮いたような、とりとめもないフワフワと浮いた雰囲気も覚えるものです。自律訓練法は、つまりその逆、体にじんわりと温熱を感じ、どっしりと重たい雰囲気を自分でイメージします。そして自分のフワフワした心を、自分の体に取り戻す。呼吸をゆっくり整えながら、その温感と重力を積極的にイメージします。

一見難しく聞こえるかもしれませんが、この習慣は小学生からお年寄りまで、幅広い年齢の方が習得できることが実証されています。これを上手にできるようになると、いつでもちょっとしたイライラからもスッと解放されて、平常心が戻りやすい体質になることがわかっています。

ここで大切なコツは、まずは右足だけに集中すること。右足だけが重たいとイメージをすることがポイントで、他のことは考えません。右足が重たく感じるようになったら、今度は右足が温かいとイメージをすることに進みます。このときも他の部位は意識しません。右足だけに集中します。

右足だけがほんのり温かく、ずっしりと重くなってくるまで続けてください。右足ができるようになったら、今度は左足だけを同じようにイメージします。すると、だんだん両足が地に足がついた感じになってくるのがわかります。

その次は手です。まず右手だけを、次に左手だけを同じように重たい、温かいとイメージし続けます。体全体を一挙にやるのではなく 右足→左足→右手→左手と、細かく部位にわけて、重たさと温熱を感じるのが大切なポイントです。その方が各部位への集中が高まり、全体として瞑想が進むことが明らかになっているからです。単に体が楽だ、イライラしないなどと漠然と暗示をかけるだけでは、効果は見られません。

自分で視覚的イメージを加えれば、より瞑想しやすい

日本人は、この自律訓練法に視覚的イメージを取り入れることが上手だといわれています。たとえば、椅子に座って右足の重さをイメージするとき、床に足がずんずんと下に引っ張られる。そして右足の温感をイメージするときは、熱めの足湯から温かさが足先へ広がっていくといった、具体的なビジュアルを頭に思い浮かべます。

これは、単に「右足が重い」「右足が温かい」と言い聞かせるよりも、ずっと速いスピードで自己瞑想に入ることができます。

たとえば手についてイメージするときも、温かい子犬が手に乗ってきたとか、小さい子どもがぐんぐん手を引っ張ってくる...といった、あなたにとって心地よい視覚イメージを、自律訓練法に加えることが上達の要です。

瞑想を精神医学に取り入れたのは欧米ですが、そこに日本人が視覚イメージをうまく取り入れたことで、その効果が格段と上がりました。これは、日本の自律訓練法の学者が提唱したこと。心を無にするのは達人の領域ですが、それよりも積極的に視覚イメージを思い浮かべることが、初心者にははるかに向いています。

ちなみに私は電車の座席に座っているとき、講演会のとき、打ち合わせのとき、テレビに出演しているときでさえも、この温感と重量感を意識しています。すると、じんわり落ち着いてきて、イライラやソワソワしている暇はなくなりますよ。緊張はしていても、なんとなく落ち着いて仕事に集中できる。おすすめの簡単瞑想法です。

さて次回は、「人間関係に役立つ! 自分の見せ方の心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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