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vol.18 2019/11/08

話を中断できる人は最強!? 相手の興味を強くひくための心理学

未完結なもの、先がわからないものが気になるのは子どもの頃から?

テレビのドラマやバラエティ番組を観ているときに「次どうなるのかな?」と興味をもった瞬間に画面がCMへ切り替わってしまったり、「続きは次週。お楽しみに!」と、ズバンと番組が終わったりすることがよくあります。そのようなことが起こると、なんとなく「いいところなのに...」など、少しイライラすることがあっても、やはり心は強くひかれて番組を観続けてしまうもの。

なぜなら、人は途中で中断されてしまったものを強く記憶に残すという原理があるからです。このことを心理学では、学者の名前をとってザイガルニック効果と呼んでいます。

私たちには、もう完結してしまったまとまりのある話よりも、未完結なもの、先がわからないうちに中断されたものにかえって魅力を感じ、興味がひき寄せられるという性質があります。それは、無意識のうちにその先の空想をかきたてられるから。続きを視覚的にイメージさせられることで、その話を最後まで知らなくては気が済まなくなるのです。

ワシントン大学の研究では、この傾向は幼少期から顕著であることがわかっています。この実験では、3歳から5歳の子どもに絵本の読み聞かせをし、一番目のグループには、絵本を最後まで読んで聞かせてあげます。しかし二番目のグループにはちょっとイジワルをし、絵本の中盤で「はい、今日はここまでね」と絵本を閉じてしまうのです。こちらは反対に未完結感を残すわけです。

そしてニ年後、「その絵本がどのくらい好きか?」ということを研究者が尋ねます。すると圧倒的に二つ目の未完結グループのほうが、「あの絵本はとっても面白いから好き」と答えたのです。途中で中断されてジラされた経験が、子どもの記憶に強く残り、その結果、絵本への好奇心や魅力を高く感じさせたわけですね。

情報を出し惜しむことで相手の興味をひき寄せる

実は、この「未完結感は人の興味関心に響く」という現象は、広告やメディア、そして教育場面でも活かされています。この現象を、あなたも活かさない手はありませんね。プレゼンや商談などでも、制限時間いっぱいに早口で話し終えてしまうよりも、思い切って途中で話を打ち切ることも有効なわけです。つまり、情報を出し惜しむことは、人の興味をひく効果があります。

たとえば「まだ新情報があるのですが、時間の都合で今日はここまで」と自ら中断したり、「続きの情報は、改めてお話ししますね」と少し引き延ばしたりするような話し方は、聴き手の記憶に強くとどまり、心を強く揺さぶるでしょう。

デートや食事会といった場面でも、終電が来る最後の最後までずーっと残っている人よりも、「私はここで失礼しますね」とパッと帰ってしまう人は、「もう帰ってしまうの?」と気になりますよね。まだ未完結なのにどうしてという相手の感情を揺さぶるような行動は、あなたの魅力や希少性をワンクラス上に高めてくれるはず。

また戦国時代の逸話ですが、あの豊臣秀吉は重要な会議中、不意に中座して、また気まぐれに戻ってくることが度々あったとか。...だとしたら、さすが天下人は違うなと思いますね。

初めはかなり勇気のいることですが、あなたの生活や仕事の中にも、このザイガルニック効果を取り入れてみてはいかがでしょうか。人は完結より未完結を素敵だと思い、興味を抱く。これを頭に置いて行動してみたら、いままで関心を示してくれなかった人が、急にあなたに関心を抱き始めるかもしれませんよ。

さて次回は、「『捨ててスッキリ』は正解? 仕事上手な人に学ぶ片付けの心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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