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vol.20 2020/01/10

『沈黙は金』は科学的に本当だった!? 交渉上手になる心理学

メンタルヘルスを保つには、怒りに対してスルーが無難!?

友達とのちょっとした会話や会社でのミーティング、親子での会話...。相手の言動にイラついたり、傷ついたり、ムッとしたり。これが毎日積み重なると、かなりのストレスになりますね。実は、カナダ大学の調査によると、日常のコミュニケーションで、私たちはなんと一日平均20~30回は、ストレスを感じているという結果が出ました。そんなストレスを少しでも回避したい。では、相手から嫌なことを言われたときにどう振る舞えば、メンタルヘルスを保てるのでしょうか。

サイエンス誌に掲載された英国・サセックス大学の調査チームは、こんな実験をしています。まず実験者は被験者に対して、高圧的に出たり、反論したり、意見を無視したりするなど、怒らせるような言動をとります。すると、被験者には二つのタイプがあらわれます。最初は、実験者に対してクレームを入れるなど、怒りをむき出しにするタイプ。そして、もう一つはその正反対で、嫌な実験者を相手にせず、むしろ黙り込むタイプです。さて、どちらが上手くストレスを回避出来ていたのでしょう。

この実験では、30分後に実験者が「わざと怒らせてごめんなさい」と謝るのですが、その結果、最初のタイプは、謝られてから半日経っても、まだストレスが継続することがわかったのです。

また後者のタイプは、実験者の謝罪を聞いたら、すみやかにストレス値が下がりました。人は相手の挑発に乗って一度怒り始めてしまうと、そのスイッチはなかなか切れず、イライラが長く持続してしまうのですね。つまり、相手が怒っていると思ったら、スルーする方が、メンタルを守れるのかもしれません。

内心はムッとしてもとりあえず沈黙している人は、自分の発した怒りや暴言からも影響を受けなくて済み、気持ちをすり減らすことがないため、結果として強いメンタルでいられるのでしょう。つまり、まともにやりあうよりも、どこ吹く風でやり過ごした方が、すぐにまあいいか...となりやすいという結果を表しています。

『デキる人』は話し上手よりも聞き上手だった!

また、2019年に行われた米・カーネギーメロン大での研究では、セールスパーソンが商品をプレゼンするときの言葉の数をカウントしています。そこで明らかになったのは、言葉が巧みかどうかは売り上げにあまり関係なく、数が大変重要だということ。

セールスパーソンの発話レベル(言葉の数)を1(トークが少なく、客の話ばかり聞いている)~30(トークが多く、客の話をほとんど聞かない)までに分類した結果、商品がよく売れる発話レベルは、なんと8~10という期待値よりも非常に少ないものであったわけです。つまり、『デキる人』は話し上手ではなく、聞き上手だといえそうですね。もちろんあまりにも話さないのは論外ですが、交渉上手な人ほど、意外と言葉の数が多くなかったわけです。

たとえば会議や飲み会などでも、自分が一方的に多くしゃべったほうが「楽しかった」「盛り上がった」「またあの人と会って話したい」と記憶に残りやすい。しかし喋り倒された方は、そのデートがあまり印象に残っていないか、疲弊を感じていることがわかっています。さらに、何でも説得されるより、自分の意見を引き出された方が、相手に好印象を持ちやすく、援助行動をしやすいこともわかっているのです。雄弁な人や話し上手な人、すぐに言葉にしてしまう人は、実は自己満足かもしれませんね。よって昔からいう、「沈黙は金、雄弁は銀」は、科学的にも正解といえそうです。

さて次回は、「手鏡をのぞく!? ナルシストが近道!? 元気な心でいるための心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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