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vol.21 2020/02/14

手鏡をのぞく!? ナルシストが近道!? 元気な心でいるための心理学

自己満足が心の舵を取る

「自分の姿を少しでもよく見せよう」という気持ちは、実は心をポジティブに保つのに重要なこと。自分は他人からどう見えているだろうか?と対外的に心を開いているとき、自然と気持ちに張り合いが出るものです。そんなときには同時に「自分はダメな人間か」「本当の私はどこにいるのか」など、ネチネチと自己洞察を深めるのは難しいのです。

手を洗うたびに鏡を凝視して前髪をいじる人、コンパクトを開いてはグロスを塗りなおす人、ネクタイのズレをしょっちゅう直す人。端から見ると自意識過剰に映りますが、こういう人こそ、実は自分で心の舵を取れています。自己満足ほど、クヨクヨした気持ちを吹き飛ばす方法はないのですから。

自分の姿なんてどうでもいい、それよりも自分の心の深部が気になる。心理学では「自己注目」というのですが、ひたすら「足首がいつも冷たい」「手が震える気がする」などと、自分の内部だけが過度に気になり、年中ネガティブな気持ちから逃れられなくなってしまっているのです。

彼らに共通するのは、一日の間でほとんど鏡を見ないということ。つまり、自分の見た目に構おうとしない。それは社会から離脱してしまう第一歩ともいえます。

自己満足力をキープして、ポジティブな毎日に

実は、昨年のワシントン大学の観察実験でも、男女ともに、普段から鏡に映る自分を見る時間が長い人の方が、抑うつ傾向が低いことが分かっています。

鬱の初期症状は、しばしば「自己注目」のしすぎといわれます。外見的な注目ではなく、「自分は本当に私らしい人生を歩んでいるのだろうか」「心臓がドキドキする気がする、息が苦しい気がする」といった、身体や心の内部に関するもの。不安の余りそれらに固執し過ぎて、端から見えているルックスにはむしろ無頓着になってしまうのです。

さらに民俗学の研究を引用すると、世界中でも、朝起きたらまず鏡を開いて化粧をしたり、髪に油を塗ったりするといった自分の身支度を入念にするという歴史がある国や地域の方は、毎日活発に働く傾向が強いそう。つまり、身繕いに時間をかけているのでクヨクヨするどころじゃないということ。これは興味深いですね。

自分がネガティブになり、悩むことが多いと訴える人口は、近年になって特に増大しています。それは他人の視線を気にしてカッコつけようとする「自己満足力」の欠如が背景にあると、私は感じています。

いつも手鏡を持ち歩きましょう。私自身もそうしているのですが、折に触れて顔をのぞくと、なんだか疲れた自分の顔が見えることも。それを見ると人は、本能的に「これはいかん」と口角を少し上げたり、目をはっきり開いたりする習性があります。顔の筋肉と脳は密接に関連していて、顔を元気に戻せば、心もポジティブになりやすくなるからです。よって、いつもクヨクヨしている人よりも少しナルシストな人の方が、はるかにメンタルは健康でいられるのです。

さて次回は、「新生活に向けて! 気の合う友人を見つけるための心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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