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vol.22 2020/03/06

新生活に向けて! 気の合う友人を見つけるための心理学

好きなものが似ている人は同じ心を持っている

春は就職や進学、部署異動やクラス替えなど、一年で最も「はじめまして!」という機会が多い時期ですね。また、お花見やキックオフなどの飲み会が多いのもこれからの季節です。これは、友達を増やす大きなチャンス!ですが、自分はどんな人と気が合うのかよくわからないという話を耳にすることがしばしばあります。

この悩みには、フリッツ・ハイダー氏の「バランス理論」が役立ちそうです。たとえばAさんが好きだと思っているものを、Bさんも同様に自分もこれが好きと思っている場合、AさんとBさんには良いバランスが取れるということ。文字通り、気が合うということですね。

女性はよくヘアスタイルがかぶってしまったり、あの人といつも洋服の色がかぶるということを気にして顔をしかめたりしますが、その人とあなたは、実は親友になれる可能性大なのです。同じものを良いと思い、身に着けている人とは、似た考え方や感性、意志を持っていることが多い。だから、男性でも自分と同じようなネクタイしていたり、よくシャツがかぶったりする人には、むしろ積極的に話しかけてみてください。好きなものが同じ人は、あなたと心が似ている人です。

ちなみに、この理論を逆説的に使うこともできます。まずは大切なお客さんが持っているネクタイ、洋服の色合い、バッグ、時計のブランドなどを観察してみましょう。そして、その相手と会うときは、さりげなくあなたもそれを真似するのです!部分的でも大丈夫。こちらからかぶっていくのが成功の秘訣。

これは汎用性が高く、1992年のケンブリッジ大学の実験によると、商談相手がコーヒーを口にした同じタイミングで、こちらもコーヒーを飲んだり、相手が足を組んだら、こちらも少し遅れたタイミングで素早く足を組んだりといったことを繰り返すだけで、相手はあなたとなんとなく気が合うと刷り込まれていくことも実証されています。つまり、気が合う人とは、似ている人だといえそうですね。

とはいえ、これには少し困った点もあります。たとえば、そのように気の合う人とは、新企画の案やプレゼンまでも似てしまい競合相手になったり、同じ異性や上司に憧れて、ライバル関係になったりしてしまうこともあるということ。よって、ケンカになったり、ムッとしたりすることも、実は少なくないのです。単に好きなものが同じというだけなら、すぐに仲良くなれますが、それが上手くいっているときはとても良好だけど、何かのはずみで衝突し、短期間の友人関係で終わることも少なくありません。

嫌いなものが一緒の方がより親しくなれる!?

ここまでは、好きなものが一致する人とは、気が合うというセオリーをご紹介しましたが、先ほどのバランス理論でハイダー氏はこのようにも唱えています。それは、嫌いなものが一致=気が合うということ。つまり、これまでとは反対で、Aさんが「私これ苦手」「あれは得意じゃない」いうものに対して、Bさんもまた「私も同じ。これ苦手、あれは得意じゃない」と苦手意識が一致する場合、これもまたバランスが取れているということなのです。「まじめな話が続くと疲れますね」「そうですよね!私も堅苦しいの苦手なんです」「お互い頑張りましょう」なんてやり取をして励ましあうことで、「気が合うな」と言うことになりますよね。セミナーや授業でたまたま同席した人と話が盛り上がることがあるのは、そういうメカニズムかもしれません。

なぜそうなるのか。それは「自分は何が嫌いか?」ということに思いを馳せるのは、「自分は何が好きか?」と感じるよりも、何倍も重要で、その人の個性・独創性が必要です。ですから、頭の中で深い処理を要することがわかっています。つまり、好きというのは浅めの感性しか関わらないことも多いのですが、嫌いと断言する感情には、深い認知処理が関連しているのです。嫌いという感情は、コミュニケーションの中で好きという感情よりもずっとその人らしさを表す本音であり、情報として深いのです。よって、嫌いなもの、不得手なものが一致する人とは、長期に渡って友達でいられます。

友達になる上で、好きなものの一致はもちろんとても大切です。しかしそればかりを合わせていては一過性の相性で終わってしまいます。それにプラスして、嫌いなものも一致している人を探してみてはいかがでしょうか。好きなものが一緒で、且つ嫌いなものも似ている。...これが、あなたと生涯に渡って、相性の良い友達ということになります。

「何が好き?」「某アイドルが好き」「いいね!」だけで盛り上がるのではなくて、「これってどう思う?私はあまり好きになれないんだけど、あなたの意見聞きたい」「僕は、ぶっちゃけこれが苦手なんだよね」と...さりげない会話の中に盛り込んで、好きと嫌いの両方がどのくらい一致するか試してみましょう。この春はこのバランス理論を上手に使って、相性ばっちりの友達を探せると良いですね。

さて次回は、「アメとムチ? 目先のことを片付けるために、相手のやる気を引き出す心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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