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vol.27 2020/08/14

客観視が大事! 自分の仕事や業務を見直して『デキる人』になるための心理学

自分の行動や感情にひとりツッコミを入れてみよう

普段、仕事などを進めていく中で、「認知」や「認識」という言葉を使ったことがある人はどれぐらいいるでしょうか。結構、使っている人も多いのでは?心理学においては「認知・認識」という言葉は、自分の考えや感情で頭も心もいっぱいになっている状態のことを指します。例えば、「同僚と言い争いになっていて頭にきている」「夫婦ケンカをしていて悲しい気持ちになっている」など、"自分の気持ち"が主人公の状態を差します。ストレスの多い現代社会では、人間誰しもそういうことだらけですよね。その「認知・認識」に、英語で「ひとつ高次元の、ひとつ高みから俯瞰した」の意味を表す接頭語「メタ(meta)」という言葉を付けて、「メタ認知」という概念を取り入れたのがアメリカの心理学者であるジョン・H・フラベルとA・L・ブラウン。彼らは「人間は『今の自分の認識』だけに支配されたり、囚われたりする単純な生き物ではないはず」と考えたのです。

これは、映画の世界ではメタフィクションという技法で使われてきているそうです。例えば映画内の一場面で、論争や決闘などで熱く戦っていた登場人物が突然観客の方を向いて他人事のように、「今、目の前でこんなことが起きている。僕は完全にまいっているよ!こいつは一体何なんだ」などと、クールに話しかけるような手法がありますよね?そこからきているようです。つまり、いきなり自分が直面している状況や感情から離れて、まるで他人事のように自分の状況を分析する=客観視するという面白さですね。この手法は、小説などでもたくさん使われています。確かにこれは人間にしかできない、高次元(メタ)な物の考え方ですね。

誰かと大喧嘩をしているときや、何かに無我夢中で他の事が疎かになっているときなどには、特に自ら俯瞰的になって「おいおい、自分はいつまでこんなことをやっているのだ」と、急に(目には見えない)観客に、「まいったね」と話しかけるようなクセをつけてみてください。すると、急に「自分はいつまでこんなことだけに、囚われているのだ」と冷静になり、スーッと気持ちが楽になることが多いもの。私はカウンセリングの仕事をしていますが、クライアントとずっとムキになって討論していても解決はしません。相手の話を「認知」でしっかり共感しながらも、「話がそれてきたので、どうやって本題に戻そうかな」という状況を俯瞰し、自分と相手を客観視する気持ちも強く持っています。熱心に相手の話を聞きながらも、心の中では司会進行も務めるわけです。また、研究や論文・書籍の執筆に熱中しているときでも、「なんだか私ヒートアップしすぎてないか?他の人が見たらここは変だろう」などと、いわゆるひとりツッコミを忘れないようにしています。

自分を客観視してみることで成績や業績の向上が見込まれる

ちなみにロンドン大学の研究(1998年)によると、このメタ認知がある子どもと、まったく意識していない子どもでは、ある決定的な違いが見つかったそうです。それは、メタ認知のない子どもは、勉強全般においてどんなに努力していても、「自分はどこが分からないのかが、分からない」と口を揃えて言うこと。つまり、熱中して教科書を読み込んでいても、「今、自分はここ分かっているのかな?ここはOKだな」という俯瞰する気持ちを置き去りにして、ただ読み進めてしまっただけということ。反対に、メタ認知の強い子どもは、たいして教科書に熱中しなくても「自分はこことここは苦手そうだな」という自分に対して、客観視する・第三者目線で見るという読み方が出来ていて、その部分だけをしっかり復習し、その結果、成績も優秀とのこと。

これは、我々大人の仕事でも同じですね。ただ熱くなるだけでなく、また焦ったり嘆いたりするのではなく、「今、何が問題なのか?」「どこまでこの話は進んでいるのだろう?」というメタな自分を持ってみる。これはあなたのメンタルを楽にするだけでなく、もう一段階、仕事がデキる人になるためのヒントになると思いますよ。

さて、次回は「相手の性格や感情を知るにはどんなところを見ればいい? 性格判断の心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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