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vol.30 2020/11/06

見た目による好印象は持続しない? ハロー効果とゲイン効果の心理学

美人やイケメンだと、実際に倍額以上、得をする!?

「あの人はイケメンだから贔屓されるよね」「やっぱり美人は得だよね」といった声をよく耳にします。心理学的に考えると、実はそれらが当たっている確率は半々です。実際に、昔から人の見た目と他者からの評価の関連性について、多くの印象研究が行われてきました。特にアメリカでは、美人やイケメンが本当に得をしているのかという実験が積み重ねられています。

具体的にはどんな実験かというと、まず被験者に虚偽の交通事故について話します。そして、その事故を起こした容疑者が(1)美人やイケメンと、(2)一般的なルックスの人の場合で、陪審役がどのくらい罪を重く判定するのかを調べるという「仮想裁判実験」を行なうのです。

最も有名なものは、米・ニューヨーク市立大学で男女530人の被験者を対象に行われた実験(1989年)です。その結果、なんと(1)美人やイケメンが事件を起こした場合は、陪審役が「たまたま疲れていたのだろう」「相手方にも非があるのではないか」という甘い判定をしがちで、5,500ドル支払って釈放という平均値が出ました。これをハロー効果といいます。このハローとは挨拶のハロー(hello)ではなく、神仏の頭部に描かれる後光(halo)に由来しています。つまり後光が差しているように目立つ特徴、見栄えの良さによって、その人の性格や能力を自然と高評価してしまう心情を表します。

しかしその一方、(2)一般的なルックスの人の場合は、なんとその倍に迫る10,000ドルもの罰金を課せられる傾向となりました。陪審役から「運転をなめているのではないか」「意図的にスピードを出していたのだろう」など、大変冷酷な判定をされてしまったのです。被告人の美醜で罪の重さが変わるというのは、ひどい話ですね。しかし、このような結果は本当なのだろうかと疑問が残りませんか?

元々イケメンであるよりも、身だしなみを整えることの方が大事

英・サセックス大の実験(2012年)から、さらに精密な結果が明らかになってきました。その結果としてクリアになったことは、顔を含めるルックスの良し悪しよりも、(仮想裁判実験上の)容疑者の髪型や服装が、陪審役の判定を大きく左右していたということが分かったのです。

たとえば、スーツでビシッと服装を決めていたり、髪を整えていたりする男性や、きちんとお化粧をしていたり、よそいきの服装をしていたり、髪をきれいにセットしたりする女性は好感度が高い。そして格好に気を配っていれば、顔の美醜は信頼度とほとんど関係がないことが分かったのです。つまり他者がその人を「信頼できる」「好感が持てる」という判断をする指針は、実際に顔が整っているかではなく、自分を美しく見せようと努力している人、社会的によく思われようとしている人かどうかなのです。

ですから、せっかく端正な顔をしていても、身だしなみをだらしなくしていたら印象はガタ落ちになります。それは社会と上手くやっていこうという本人の心情が見えないからです。反対に、たとえルックスに自信がない人でも、身だしなみをきちんと整えていたら、社会はその人を受け入れようとします。この人は向社会的で協力的な人間だと判断され、信頼されるのです。となると、「美人やイケメンが得で、そうでない人は損だ」という説は怪しくなってきましたね。

さらに、心理学では「ゲインロス効果」というのですが、印象が薄い人が少し活躍をすると「期待以上に有望な人だった」と過剰に高く評価される(ゲイン効果)と、美人やイケメンのように最初から目立つ人が失敗をすると「外見だけだった。すごくガッカリした」と過剰に落胆される(ロス効果)という心理があります。

皆さんも、何も意識していない芸能人よりも、自分が応援しているアイドルや俳優さんがスキャンダルを起こす時の方が、過剰にガッカリすることはないでしょうか。またあまり気に留めていなかったタレントさんが、ボランティアなどの大きな社会活動をしていると知った途端に、その人を大きく見直してファンになってしまったということはないでしょうか。

もちろん見た目は大切です。美人やイケメンは、第一印象で目立つので得することもあるでしょう。しかしそうでない場合でも、他者が真に好感や信頼を寄せるのは、顔の良し悪しではなく「私はやる気があります」「良く思われるように頑張っています」というメッセージの伝わる、きちんとした格好をしているかどうかなのです。またルックスが良い人は少しの失敗でも急速にガッカリされます。つまり、そうでない人は少しの功績でも急に評価が上がります。美人やイケメンもなかなか大変なわけです。

もし自分は顔に自信がないからどうせダメだ...と思っている方がいたら、ぜひこのカラクリを忘れずに! 今すぐに顔を洗って、髪や身なりをビシッと整えましょう。仕事にも、恋愛にも明るい表情でどんどんチャレンジしていくと、周囲の好感度もアップしますよ。

さて、次回は「失恋から立ち直るには? 悲しみから抜け出すための心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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