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vol.31 2020/12/11

失恋から立ち直るには? 悲しみから抜け出すための心理学

人は幸福感が同程度の人といるとメンタルが落ち着く!?

自分が恋人と上手くいっていないとき、超ラブラブな友達カップルの話は聞きたくないですよね。その反対に自分の婚約が決まったとき、失恋真っ最中の親友にはそのことを告げにくい。

アメリカの細胞生物学者であるブルース・リプトン博士の研究(2009年)などによると、私たちは幸福感が同程度の人たちといるときに一番メンタルが落ち着くと考えられています。これは、嬉しいときや楽しいときを共有する結婚式やクリスマスなどのパーティーで盛り上がる気分はもちろんですが、飢えや戦争、悲しみといった悲惨な状況であっても、周りが同じくらいの不幸を感じているのであれば、自分も我慢しやすいということも示唆していているのです。

失恋...、それは飢えや戦争とまではいきませんが、家族の病気や自分の就職難と同じくらいの悲しみやストレスを人生に与えるという心理学者がいます。そう考えてみると失恋は人生においてかなりつらい経験ですね。では、どうしてそこまでつらいのかというと、アメリカの社会心理学者であるバーナード・ワイナーの原因帰属理論ではこう考えます。「自分が相手と上手くいかなかったのは、『自分に悪い原因』があると人は必ず考えるからだ。そしてそれを考え始めると、そのループからなかなか抜け出せないからだ」と。確かに「フラれたのは自分が男らしくなかったから」「やっぱり私が可愛くなかったから」などと考え始めると、もう明かりを消して塞ぎ込みたくなりますよね。それどころか、次の恋愛自体が怖くなってしまう人もいます。

自分の愚痴やコンプレックスを披露して、叱咤激励してもらおう

そこでオススメしたいのが、同じような気持ちを抱える人を集めて、自分の愚痴やコンプレックスを披露する会を開催することです。最近では、マッチングアプリに代表されるように、ハッピーな出会いを求めるのはみんな大好きですよね。しかし、それで上手くいかなかったらさらに傷付くでしょうし、運良く出会っても楽しいことばかりではないはずです。以前、私のセラピーでは、その反対、つまり「アンマッチング同好会」なるモノを定期的に開いていました。つまり、失恋した人たちが集まる会です。この良さは、何と言っても失恋によってメンタルがダウンした人たちが集まっているので、愛想を振りまいたり、作り笑顔を一切見せたりしなくて良いところ。先ほども書きましたが、精神的につらいときは、みんなが同じ状態である方が気分はラクなのです。

そして何よりも、素晴らしいのが、周囲から声の掛け合いが始まるということ。たとえば「僕は背が低いからダメだった」という男性がいれば、誰かが必ず憤慨して「そんなこと気にする女性とは別れて良かったじゃない!」と始まります。また「私は頭が悪いから嫌われたと思う」という女性がいれば、「頭の良い女性が好きだなんて、その男性は何かコンプレックスがあるよ」といった感じです。この会は、お酒を飲んでいるわけでもないのに、コーヒー片手に長いときは3時間も続きます。そして最後は大笑いして解散していきます。ネガティブな話を集団で吐露しあっているとき、その雰囲気はどんどんポジティブに変わっていくから不思議です。この集団療法は、エンカウンター・グループというカウンセリング手法で、うつ病や依存症で自分ばかりを責めている人たちにも、かなり有効であることがわかっています。

ワイナーは、「負の原因を人は考え、そこから抜け出せない」と言いますが、私自身としては、自分ひとり、孤独な状況で考えすぎるからだと思うのです。もちろん徹底的に考えて、泣きたいだけ泣いた方がスッキリするのですが、それに加えて、自分の愚痴やコンプレックスを口にして、他者に「それはあなたのせいじゃない」「運が悪いだけ」などと、半ば冷静に叱咤激励してもらったり、笑ってもらったりすれば、それは意外と何でもない悩みだと気付くものです。少なくとも、自分ひとりが抱える問題ではないということは体験できます。

今は気軽な会合が難しい時期ですが、まずは家族や友人などの身近な人たちとオンラインを通じて、ネガティブな話題をテーマに語り合うことからチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

さて、次回は「特別な買い物はキリの良い価格ほどよく売れる? 物の価値判断にまつわる心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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