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vol.32 2021/01/08

特別な買い物はキリの良い価格ほどよく売れる? 物の価値判断にまつわる心理学

スペシャルな買い物はキリの良い価格ほど、価値を感じる?

年末年始のバーゲンでたくさんお買い物をした方も多いと思います。 一般的にデパートの値札やレストランの価格表には必ず目を通しますよね。そして、誰もが「これはお買い得だ!」「これはボッタクリじゃない?」などと、心の中で判断してから購入するかどうかを決定しています。さて、その意思決定。あなたは適切に出来ているでしょうか。

私がある大学の学生340名と、その保護者の方210名に対して、買い物に関するアンケート(2012年)をしたところ、「(価格の判断を)適切に出来ている自信がある」74%、「概ね出来ている自信がある」20%という結果になりました。買い物に関しては、誰しもかなりの自信家であることがわかりますね。

実は、お正月のおせちや縁起物のお守りなど、特別なときに買うものの値段は、バーンと10万円、5千円など、キリの良い価格でないと、人は魅力を感じないというのはご存知でしょうか。普段めったに食べないフレンチのフルコースや高級寿司になると、3万円と値付けされている方が「今日は特別だから」といった優越感(スノッブ効果)が満たされ、連日予約でいっぱいという現象が生まれやすくなります。

ちなみにリッチな人たちは、価格の高い商品やサービスほど需要が増す傾向があり、アメリカの経済学者であるソースティン・ヴェブレンは、このことに対し、見せびらかしの要素があるとして顕示的消費と呼んでいます。実は、リッチでなくても、人は同様の商品を比較するとき、自然と値段が高い方が高級だと思ってしまいます。というのも、人は、値段が上の物ほど、品質が良いといったイメージから物の価値を判断してしまう傾向があるからで、これをヒューリスティック(単純化)と呼んでいます。

よって、高級レストランが「今日から500円引きです、どうぞ来てください」と値段を下げたり、高級ブランドが半端な価格で値下げしたりすると、「人気が落ちたのかな」と買い手の熱気や高揚感が一気に冷めてしまいます。つまり、スペシャルな高級品や縁起物を買うときはポッキリ高飛車な値段の方に、心踊らされて気前が良くなるわけです。

日本でブランド物の人気が高くなる理由とは?

また日本人はよくブランド好きだといわれていますが、人がブランドに魅力を感じる理由は何でしょう。元来、ブランドとは自分の所有している家畜などに焼印を押し、他人の家畜とを区別するためのものでした。つまり、それと同様に自分の商品やサービスを他と差別化できるようにオリジナルの名前をつけたものがブランド名。他とは一線を画す商品やサービスは、言うまでもなく価値が高いため、それが高級品=ブランドと呼ぶようになったのです。つまり、他社以上に上質で、デザインや素材に優れたものがブランド品というわけ。これがブランドの一次的価値だといえるでしょう。

また、それに加えてブランド品は、人に自信を持たせてくれるものでもあります。ブランド品を買うことで「自分は一流品を買えたんだ!」と思えたり、所有することで同様のステータスを感じて心強くなったり、自分自身も胸を張れるようになるということもあるのです。

上記を踏まえると、人の持つ価値観や物の価格に対する判断は、数字や周囲の評判に左右されているということ。それを上手に楽しんだり、ときには注意深くなったりしながら、充実感のあるショッピングが出来たら良いですね。

さて、次回は「目は心を映し出す鏡? アイコンタクトの心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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