vol.33 2021/02/12

目は心を映し出す鏡? アイコンタクトの心理学

人間関係を円滑にするには、アイコンタクトが大切

皆さんは初めて会った人の印象をどこで判断していますか?「目は口ほどに物をいう」とは、よくいいますが、これは科学的に実証されていることなのでしょうか。アメリカの心理学者ロバート H ナップは、人はどこから他人の第一印象を判断するのかということについて調べるために、次のようなユニークな実験を行ないました。 

1.お互いに目隠しをしたまま、握手するグループ(身体接触だけグループ)
2.お互いに目隠しをしたまま、世間話をするグループ(会話だけグループ)
3.目隠しをはずして、目を合わせるだけのグループ(視覚だけグループ)

すると、面白い結果が現れました。まず(1)の身体接触だけのグループは、お互いに顔も見ることもなく、ただ手が接触しただけなのに「信頼できそう」「(彼、または彼女は)自然体だ」など、一定の印象を形成しました。しかし、すべての回答に「...かも?」という自信がなさそうなコメントが書かれており、やはり「相手の目を見る機会がない」「話も出来ない」といった状況では、長い間握手をしたり、ハグをしたりしたとしても、第一印象から性格までを推測するのは難しいようです。

しかし、(2)の会話だけのグループになると「親近感を感じた」「よそよそしい感じがした」といった、自分と相手の親和性・距離感について印象形成が出来ることがわかりました。たしかに、仕事相手の顔を知らなくとも、電話で話した時に親しみを感じたり、逆に壁を感じたりすることがありますよね。

さて、問題は(3)の視覚だけのグループです。やはりこのグループは、ダントツで相手の印象を多く持つことがわかりました。この被験者たちは目隠しを外して、ただ目を見合うだけ。話すことも触ることも禁止されているのです。しかし、男性同士・女性同士・男女のどのグループでも、根拠のない心の内面についての印象を持ち合うことが分かったのです。たとえば、何も話してもいないのに「やる気がありそうな人だと感じた」「元気のない人に見えた」「面白そうな人だと思う」などなど。そしてまったく接触もしていないのに「健康そう」「力強い感じがした」など。その正否はともかく、たくさんの印象形成がなされることがわかりました。

ただの情報伝達だけなら電話やメールでも十分ですが、人と人の感情の交流においては、「目は口ほどに物をいう」ということは科学的にも事実だといえそうです。人はとにかく、相手の目を見たいもの。そして、目と目を合わせてコミュニケーションをとる=アイコンタクトで相手を知ろうとし、良好な関係を築くために役立てているのです。これはチンパンジーなど、他の高度な霊長類にもみられる特徴です。

瞳に気持ちを込めれば、コミュニケーションも広がる

私のカウンセリングにも、ときどき真っ黒なサングラスをかけてくる方がいらっしゃいますが、目の表情がまったくわからないと、その人の心の奥にまでアプローチするのにとても時間がかかる傾向があります。

近年の米イエール大による認知心理学の実験でも、「嘘をつくときは右脳と左脳の行き来が多くなるため、視点が定まりにくくなって目がキョロキョロする」「自信がない時には頭の中をまとめることに認知負荷がかかるため、まっすぐ前を向いたりうなずいたりする余裕がなくなる」、逆に「やる気が溢れて、ドーパミンが多量分泌される時は瞳孔が大きく開きやすい」など、心と瞳の関連について、多くの研究結果が発表されています。

外出先ではマスクが手放せず、また自宅でリモートワークを余儀なくされている今。私たちはアイコンタクトを取る機会がかつてなく増大しました。お互いの心を理解するためにも、瞳の中に感情を込められると良いですね。そしてあなた自身も、元気な瞳でやる気をアピールすると、もっとコミュニケーションが広がるかもしれませんよ。

さて、次回は「似たもの同士は結婚しやすい? マッチング仮説の心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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