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vol.41 2021/10/08

赤ちゃんが可愛いと感じるのはなぜ? 愛情を引き出す心理学

ルックスだけでなく行動でも愛される赤ちゃんの特徴

電車やエレベーターに乗り合わせた赤ちゃんが、ジーっとこちらを見つめてくる。そんなとき、まったくの他人なのに、すごくドキッとしたり、戸惑ったりすることはありませんか? 赤ちゃんは私たちの「可愛い」「お世話したい」という気持ちを一瞬にしてアップさせる刺激的な存在です。これは人間の赤ちゃんのみならず、イヌやネコなどの哺乳類、また鳥類や爬虫類の赤ちゃんでも同じ。生物の赤ちゃんは人を強く魅了する魔法を持っているようです。

実は、赤ちゃんのように他者の助けが必要なものに出会ったとき、私たちに沸き起こる「可愛い」という感情に関する研究が心理学や人体工学などの様々なジャンルで積み重ねられてきています。その中でオーストリアの動物行動学者であるコンラート・ローレンツは、生物の赤ちゃんが持つ独特の魅力を「ベビースキーマ」と提唱しました。ローレンツが提唱する人間の赤ちゃんの持つベビースキーマは大きく分けて3つのポイントがあります。

1つ目は、赤ちゃん特有の「全体バランス」。つまり、頭が大きくて、頬がふっくらと丸い。手足が小さくて短いという特徴。そして赤ちゃんの体は全体的に安定感がなく、クニャクニャと動いていますよね。それを見ると、大人は思わず抱き上げたくなりますし、お世話したくなる気持ちが高まるものです。2つ目は、「唇」です。赤ちゃんは「おちょぼ口」で、上唇がとんがって、少し開いていることが多いですね。そんな形状を見ると、大人は「何かを食べさせたい」「コミュニケーションを取りたい」という気持ちが引き出されます。そして決定的なのは「瞳」です。顔の中で瞳が真ん中よりも下に付いていて、大人よりもずっと丸い。そしてどんな色の瞳でも、輪郭がくっきりしている。そのようなベビースキーマがあるようです。

前述のように電車やエレベーターで赤ちゃんから見つめられると、どんな人でも無視をするのが難しいでしょう。このように赤ちゃんに対して自然と感じる「可愛い」という感情=ベビースキーマは、大人に「なんとかしてこの子を守り抜こう」という意欲(養育欲求)を強くかきたて、種の保存の武器になっていると考えられるわけです。

もちろん「可愛い」「お世話したい」と大人に思わせる赤ちゃんの力は、ルックスにのみによるものではありません。赤ちゃんは非常に社交的です。よく泣き、急に笑います。また手足をバタバタしたり、力強く動いたりするなど、大人に対して「ねえ、こっちを向いて!」というシグナルを絶えず送り続けています。私たちはそのような赤ちゃんのアクティブな社交性に戸惑いながらも、なんとかコミュニケーションを取りたいというモチベーションを抱くようになるものです。

メイクを上手に使えば、愛され顔に変身できる!?

このベビースキーマの特徴は、ぬいぐるみやゆるキャラ、アニメキャラクターのデザインにも幅広く活かされています。他者(ファン)に「仲良くなりたい(接近欲求)」「守りたい(養育欲求)」という気持ちを与えるには、デザインや動き方でお手本になるところが多いわけです。

大人でも、自分自身を「この人と仲良くなりたい」「面倒を見てあげたい」と他者から思われるようなルックスに近づけるには、ベビースキーマを利用したメイクでも応用出来ます。たとえば瞳の位置を下に見せるようなヘアデザインや瞳を瑞々しく見せるアイメイク、ルージュの彩り方などで赤ちゃんのような可愛らしさを引き出せるかもしれませんね。赤ちゃんから引き出される養育欲求・接近欲求。ここから私たちが学べるヒントは、無数にあると思いますよ。

さて、次回は「相手が泣いた時はどうすればいい? 好意の返報性の心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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