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vol.43 2021/12/10

うまく目標を立てるコツって? 遠隔目標と近接目標の心理学

誰しも遠すぎる目標は達成しにくい

朝、目覚めた時どうしても気分が冴えない、ファイトが沸かない、疲れが溜まっているという日、ありますよね。 しかも、そういう日に限って大切なクライアントとの初顔合わせ、新しい企画のプレゼン、大学で課題の発表など、あんなに日々準備したはずなのに当日になってこんなにやる気が起きないのはなぜ? もう今日は無理だわ。1日中寝ていたい、起き上がれない。そんな心の葛藤が日本のあちこちで起きています。

イエール大学の調査(2000年)で、ドイツ人にも同様の傾向がみられるという結果がありました。その理由は、真面目で几帳面すぎる国民性に関連があるのかもしれませんね。このような状態を心理学では「遠隔目標しか頭に置かない」という言い方をします。遠隔目標とは「この仕事を完璧にこなす」「この人間関係を100%修復する」「難関校に合格する」といった、大きな結果のことを指します。私たちが朝起きるのでさえ億劫になるのは、この気負いすぎが元凶であることがしばしばです。

自分へのご褒美は先回りしてあげるのが吉

一方、そんな悩みとは無縁の人は常に「近接目標」を頭に置いています。例えば、大きすぎる目標達成は一旦置いて、朝起きたら「美味しいコーヒーを自分で淹れよう」「新発売のジュースを飲んでみる」といった、今すぐに出来ることしか頭に置かないのです。

すると、どんなにブルーな朝でもすっと起きられますよね。ちなみに私自身はコーヒーが好きなので10種類以上のコーヒー豆を常にストックしていて、朝目覚めたらベッドの中で「今日はあの豆にしようかな。だったらお湯の温度はやや低めが良いな」ということしか考えません。そして、コーヒーのためだけに起きるのです。

「良い講演会をする」「モデル体型になる」「新規の取引先を20社ゲットする」というような遠隔目標で人はパッと動けるはずがありません。大切なのは、遠隔目標に辿り着くためにたくさんの近接目標を用意すること。つまり、遠くの希望を目指すには、それに繋がる目下の目標がないと達成するのは難しい。邪道かもしれませんが、行動心理学では、人は近接目標に向かって自己強化(自分のモチベーションを上げる習慣)をして、遠隔目標へと動き出すことがわかっているのです。

昔からよく、頑張ったら自分にご褒美といいますよね。しかし、前述の原理によると、私はそれでは遅いと思います。頑張って遠隔目標を達成出来たら、自分へのご褒美として美味しいものを食べたり、高いショッピングをしたりするのは、そのときだけ達成感を感じるかもしれませんが、自己強化には結び付きにくいからです。

細やかなことでかまいません。遠隔目標に挑むぞと思った瞬間に、近接目標として、すぐ自分にご褒美を与えるべきです。起きたらとっておきのデザートを食べて、お気に入りのジャケットを羽織って、新しい整髪料を試してなど、すぐに出来て、とても楽しみな行動を重ねていくことでだんだん心が温まり大きな目標遂行へと向かうことが出来るのです。誰しもいきなり強敵と戦うのは無理なこと。そんなことばかり続けていると、挫折してメンタルがもろくなってしまいます。

小さな楽しみ、小さなご褒美を自分に与え続けることで、私たちは大きな目標に立ち向かうことが出来るのです。そしてご褒美には、出来るだけバリエーションをたくさん持つこと、そして、早めに自分に与えてあげられるものであること。これが元気に大きな目標に挑んでいける人の特徴だと、心理学では考えられています。つまり、壮大な遠隔目標を立てたら、そこに近づいていくための近接目標を出来るだけたくさん計画し、自分にご褒美をあげること。これがうまく目標を立てるコツですし、続けると無理なく頑張り屋さん体質になれますよ。

さて、次回は「反対意見は目に入りにくい?! 確証バイアスにまつわる心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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