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vol.47 2022/04/08

じゃんけんで何を出すか見れば、相手のことがわかる? 内面を見抜く心理学

人生に意味合いを見つけるとポジティブになれる

時間がないのに、話し合っても膠着状態で決まらない。では、じゃんけんで決めますか!そんな状況は大人になっても結構ありますよね。グー・チョキ・パーのどれを選択するか。その何気ない仕草にも、実は心理的な意味があるということが指摘されてきているのです。

米・ペンシルベニア大学のマーティン・セリグマン博士は、前向きな気持ち(ポジティブ)を構成する大事な要素として「意味合い(meaning)」を考える生き方が必要であることを提唱しています。確かに私たちは、もし意味も分からず、穴を掘らされてはそれを埋め、また穴を掘ってはそれを埋め、というような意味合いが見出せない行動をさせられるとしたら、ポジティブになることは難しいでしょう。むしろ、そんな意味合いのない行為を長時間強制されると、中には発狂してしまう人もいるという報告もあるくらいです。じゃんけんひとつでも同じ。「この人はグーばかり出すな。なぜだろう?どういう性格なのかな?」と、意味合いを見出そうとする人生は積極的かつポジティブで楽しいものになるのです。それをただの偶然で片付けてしまうのは、つまらない人生かもしれませんよ。

グーを多く出す人は協調性が高く、頼れる先輩や上司

現時点ではじゃんけんの傾向と性格について、次のようなことが考えられているようです。まずグーを多めに出す人は、概ね素直で協調性があり熱血なタイプが多いといわれています。イメージとしては、運動部のキャプテンや部下から慕われたり、相談されたりする先輩・上司でしょうか。グーの手の形は、私たちが赤ちゃんの時から自然にやっていること。いざここで勝負という時にも、まだその自然体のグーを出し続けるという人には確かに素直さや駆け引きのない率直さを感じますね。そういったさっぱりした簡潔さのことを、イギリス出身の哲学者・言語学者であるポール・グライス氏は「協調性の原理」の中の主軸であると述べています。グーで勝負するというのは、協調性があってある意味潔ぎ良い性格の人かもしれませんね。

これと少し似ているタイプが、パーを多めに出す人だといわれています。確かに「手の内を見せる」という慣用句があるように、手のひらを開くことが多いというのは、心の内側を見せることに、さほど恐怖心のない陽気な人かもしれませんね。イメージとしては、お笑い芸人とか(明石家さんまさんは「パーでんねん」というギャグを今でも惜しげなく披露してくれますね・笑)。会議などの時に、最初に自分の本音を語ってくれる人や場を和ませるために自虐的なエピソードを披露してくれるタイプの人という感じでしょうか。このように、あまり計算高くない陽気な性格の人は、パーを多めに出す傾向があるようです。なお、米・イエール大学(2019年)のレポートでは、親が小さい子どもに出すのは圧倒的にパーが多いという報告もあります。相手に心を許しておおらかな気持ちの時に、人はパーを出す傾向があるのかもしれません。

また、グーとパーに関してはこんな報告もあります。何かの順番を競ってじゃんけんをするとき「別にいつでも良いのに」とモチベーションが低い状態だと、人はグー・パー・グー・パーと繰り返すというのです。確かに、グーパーグーパーを出し続けるのは、適当な感じしますね。その反対に、モチベーションが高い時は、グー・パー・チョキをランダムに出すという傾向があります。これは何となく理解できますよね。手をグーに握ったり、パーと開いたりするのは(実際にやって頂くと分かると思うのですが)、随分簡単なことです。つまり、その勝負において、やる気がない時は「自分が負けてもいいからさ。はいはい」という気持ちが、じゃんけんの態度に現れるのでしょう。しかし、完全に本気で「この勝負は絶対に勝つ!負けられない!」と燃えている時、人はそんな簡便・安直なことはしません。あらゆる可能性に賭けます。面倒と思っていられず、すべての手を使って勝利しようとするものです。グー・チョキ・パーという3つの切り札を持っているのなら、それを余すところなく使わなくては損だという気持ちになるものでしょう。

かくいう私も、もし職場で配布されるお茶のブランドを決めるだけならどれも美味しいから、AかBのどっちにするか決めましょうといわれても「グーパー方式」になりがち。ですが、自分がちょっとこだわりたいと思っていることについては、それこそ腰を入れてグー・チョキ・パーのすべてを駆使しています。今、書いてみて改めて気付かされたのですが、時と場合によって、じゃんけんにも随分手を抜いたりムキになったりするものですね。

さて、私がもっとも面白いと思うのがチョキを多めに出す人だと思います。日本小児科学会の報告では、一般的に生まれて数カ月の赤ちゃんは自分の手でチョキが作れません。個人差はありますが、ようやく1歳前後になって赤ちゃんは次第にチョキが出来るようのなるのが平均値であるとされています。つまり、チョキは大人にとっても認知的負荷の高いもの。グーやパーに比べると面倒くさい形状なのです。そのチョキを積極的に出す人は、なかなかの戦略家タイプではないでしょうか。頭が良くて神経質な人だともいえると思います。たとえば発明家やIT系の実業家、凄腕営業パーソンといった頭脳派を勝手に思い浮かべてしまいます。

結局のところ、じゃんけんでこれを出す人はこんな性格と確定するのは科学ではなかなか証明しづらいことではありますが、先のセリグマン博士のように、何事にも「意味合い(meaning)」を見出すということは人生を豊かにしてくれる大切なこと。このコラムを読んで頂いて、普段、何気なくやっているじゃんけんを性格に結び付けて考えてみると、より盛り上がれるコミュニケーション・ツールのひとつになると思いますよ。

さて、次回は「集合写真を見ると、その人の性格や将来がわかる?プロファイリングの心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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