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vol.57 2023/02/10

オンラインミーティングで好印象を与えるには? 仕事にまつわる心理学

一体感の生まれないオンラインミーティングは印象が良くない

ここ数年は世界的なコロナ禍に見舞われたことによって、オンラインの会議や授業が一般的になってきました。確かにオンラインは簡便で、どこにいても複数の人たちと対話が出来ますね。私自身も、打ち合わせや授業をオンラインですることが、次第に増えてきました。しかし、近年の研究でオンラインには次のような弱点があることがわかってきました。

オンラインばかりで会議や授業を行う場合「自分たちは皆で力を合わせて働いている」「AさんやBさんも努力している」といったメンバー同士の一体感(協同感情)が実際に対面で行う会議や授業のようには生まれにくい。確かに複数人でのオンラインミーティングでは、他のメンバーの表情や感情に気を配る余裕がなくなりがちですね。ただひたすら「情報をきちんと発信すること」「話を正確に受け取ること」だけに集中してしまう。そのためか、発表者がいくら良いことを言っても「そうだそうだ!みんなで頑張ろう!」というメンバー同士の高揚感が後回しになってしまいます。その結果、なんとなく「盛り上がりに欠ける授業」「冷たい感じのミーティング」といった印象が残ってしまうことは少なくないようです。

実際に、米・ピッツバーグ大学の調査(2009年)では、110人の学生を同じ教室に集めて行うリアル講義とオンラインで一斉配信した講義と比べると、オンラインでは学生ひとりひとりの「高揚感」や「モチベーション」が、たったの3分の1しか得られないことがわかりました。これは見逃せない現象ですね。では、自分が講師やミーティングの主催者(モデレーター)になったとして、オンラインで参加者に好印象を与える=講義やミーティングに充実感を持てるようにするにはどうしたら良いのでしょう。

参加者をチームにすることによって感情の共有を意識出来る

英・オックスフォード大学(2011年)ではこんな試みが行われています。80人の聴講者をランダムに20人×4グループにし、赤・青・白・黒の4つに色分けをした上で講演をするという実験です。そして所属チームのカラー(赤・青・白・黒)をオンライン画面の背景色に設定してもらいます。単純に色分けをするだけですが、これによって心理的には80人で一斉に授業を受けているのではなく、チームで講義に参加するのと同等の緊張感や積極性が見られることがわかりました。つまり、80人の集団作業ではなく4つのチームなのだという感覚を持ってもらうことで、参加者同士が互いの表情を見合ったり、笑いあったり、頷きあったりする回数が増えることが明らかになったのです。

オンラインのミーティングや学校などの講義でも、この方法は活かせそうですね。たとえば画面上で数名に分けてグループ名を付ける。それだけでメンバーの積極性が増してくるわけです。私自身も最近のオンライン講演等では、この方法をマネして取り入れています。たとえば聴講者を数グループに分けた上で「あれ、グループAは不思議そうな顔をしていますね」「グループBはすごく笑っていますね」などと声掛けをするようにし「私は皆さんの表情を気にかけていますよ」という意志が伝わるように、なるべく気を付けています。

人間はもともと他者と感覚を共有することで、初めて喜怒哀楽といった瑞々しい感情を実感することが多いもの。だからオンラインでも実際の会議のように、みんなで一緒に笑いあったり、頷きあったり、目を見合わせたりするような目に見える感情の共有が活発になるよう工夫することでそのミーティングの印象が良くなるようです。

今まではあまり必要性を感じなかったことですが、オンラインになるとこのような気配りの必要性を痛感させられているところです。オンラインミーティングで参加者に良い印象を与える=充足感を持たせる...難しいことですが、心理学的には、いかにネットの向こうの相手を「置いてけぼり状態」にせずに、どう全員を巻き込むかということにかかっているようですね。

一般的な印象作りのように、「声がハキハキ」「清潔感のあるスーツ」「スマイル美人」...といった外見的なことだけではなかなか乗り切れないのが、オンラインでの印象作りの難しいところであり、キモとなる点だといえそうです。

さて、次回は「メンタルも体調も! 呼吸にまつわる心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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