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vol.62 2023/07/21

ずっと見続けてしまうのはなぜ? スマートフォンにまつわる心理学

「プロセス探索型」の人はネットの沼にハマってしまう

スマホで何気なくネットを観ていたつもりが、検索を繰り返してしまってやめられない。それで仕事や勉強、家事が疎かになってしまう。あなたにはそんな経験がありませんか。そういう日がずーっと続いて、家族や友だちとのコミュニケーションが減ってしまったり、睡眠時間が短くなったりしてしまうようでは、心身ともにヘルシーではないですよね。確かにスマホは便利ですし、ネットは好奇心を満たしてくれるもの。ですが常にスマホが気になってしまう人がいる一方、そんなにスマホを見なくても大丈夫という人がいますね。両者には、心理学的にどのような違いがあるのでしょうか。

英・オックスフォード大学(2010年)の研究で、ローガン教授は過去4年間に渡って1,510人の学生がレポート作成をする様子を観察分析し、その結果として、人の行動は2つのタイプに分けられると提唱しています。その1つは「ゴール遂行型」で、もう1つは「プロセス探索型」というもの。前者は、何かに疑問を持ち、それを調べようと一度思い立ったら、他の情報には目もくれず、まっしぐらにその疑問点だけを調べ、解決する人。一目散にゴールへと向かうタイプです。それに対して後者は、そのことを調べようと思い立っても、途中で他の情報が入ってきたら、すぐにそちらへ寄り道してしまう人。よそ見しているうちに、当初のゴールに辿り着くまで時間がかかってしまうタイプです。この「ゴール遂行型」と「プロセス探索型」には、双方に一長一短がありますね。目標まっしぐらの人にも、途中過程をじっくり楽しむ人にも、それぞれ仕事の向き不向きがありますし、楽しいと思えることのジャンルも違うわけです。ただ1つ、では「スマホをいつまでも見続けてしまうタイプはどちらか?」と問われれば、それは間違いなく後者の「プロセス探索型」の人といえるでしょう。

例えば「明日 関東地方 天気」とスマホに打ち込むと、それに関連する情報がたくさん出てきますね。つまり「天気」というワードに少しでもフックした情報・動画が、まるで芋づる式で提供されるわけです。それこそがネットの特性であり、面白さであるには違いないのですが、そこで「プロセス探索型」の人は、その芋づるにまんまとハマる傾向があるはずです。いつまでも「おっ!これ何だろう」と様々なサイトに立ち寄り続けてしまって、その結果としていつまでもスマホを眺めてしまうのではないでしょうか。それに対して「ゴール遂行型」の人は、そのような情報は完全に無視できるという能力を持っています。とにかく自分の知りたいことへ一直線に進み、明日の関東地方の天気さえわかればそれで満足してスマホを閉じるわけです。ゴール遂行されただけでもう満足してしまうからです。

もし、あなたがスマホをダラダラと見続けてしまってイヤだなと悩んでいるのなら、その手法を取り入れる意識を持つだけでも変わるはず。ゴールを遂行したらそこまででスマホは閉じる。そして、また新しく調べたいことが出て来たら、改めてスマホを開くという習慣を付ければ解決に向かうはずです。小さな習慣の積み重ねはバカに出来ません。大事な人生の時間配分を左右するものだから。

ストレス対策には誰しも視覚の気晴らしが必要

スマホが普及して、誰もが1台持っているという時代になった現代だからこそ、スマホ依存症という現象が見られるようになったのかもしれません。約30年前には全くそんなことはありませんでしたよね。でもその代わりとして、満員電車では新聞紙を小さく広げて、所狭しと読んでいる人も多かったし、テーマパークやレストランで行列している時には誰もが雑誌やマンガ本を手にして、視覚的な気晴らしを積極的にしていました。このような行動は時代が変わっても、人間の習性として変わらないということです。

イライラした気持ちや退屈な気持ちを紛らわすのに、人は手元にある視覚的情報に目を移すことで、ストレスを誤魔化したり、解消したりするものなのです。つまり、人はメンタルバランスを保つために手を変え、品を替え、適応していたわけですね。今はたまたま、その対象がスマホでネットを見たり、ゲームをしたり、メールや動画を送り合うことなどに置き換わっています。でも、ストレスコーピング(心を落ち着けるための逃避的対処)としては、いつの時代も、実は同じ原理のことをしてきたのです。

こう考えると、ついスマホを見てしまうのは、その人のストレス対策として、とても必要な時間なのかもしれません。だから急に家族のスマホを没収したり、社内では電源オフにさせるといった極端なことはせずに、徐々に「ゴール遂行型」へと使用方法を移行させるというのが理想的。「プロセス探索型」を「ゴール遂行型」へと導く過程を一気に行うと、後の反動形成が起こる可能性があるため、スモールステップで行った方が成功しやすいのではないでしょうか。

さて、次回は「見た目も内面もパワーアップ! 自分磨きにまつわる心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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