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vol.63 2023/08/10

見た目も内面もパワーアップ! 自分磨きにまつわる心理学

服装ひとつで正義感や責任感がアップする

米・コロンビア大学(2009年)の研究では、男子大学生120名を対象にした面白い実験が行われています。半数の60名には着古したTシャツを、残り半数には新しいジャケットを身に着けてもらいます。そして、隣の部屋から「キャッ!」という少女の小さな悲鳴(録音テープ)を聞かせるというもの。

その結果、Tシャツの男子生徒はなんと全体の3分の1しか隣の部屋に駆け付けず、残りの人は聞いて聞かぬフリをしたのです! それとは反対に、ジャケットを着た学生は、ほとんどの人が隣の部屋まで飛んでいき、知らん顔をした人はたったの4名しかいなかったとのこと。この実験結果は衝撃的でした。その時、身に着けている洋服が、その人の行動を大きく変えてしまうということですから。きちんとした身なりをするだけで人は社会的になり、正義感や責任感が顕著にアップすることが示されたのです。たしかに、学校の制服をキチンと着ていたら先生に反抗することが難しくなったり、王様の冠を被ると威厳ある人格になったりしそうですよね。また軍服を着させられたら、普通の人よりも勇敢さが増しそうな気がします。

スキンケア、ファッション、ダイエット...、現代では女性だけではなく、男性も外見磨きに熱心な方が増えました。そのような「自分磨き」の効果は、単なる自己満足だけではなさそう。この実験結果が示しているように、自分の見た目を良くすることは、メンタルコンディションや周りの人に対する態度まで良くすることに繋がるわけですから。見た目が内面を変える。つまり、自分磨きは内面をパワーアップすることに直に繋がるわけです。この法則を日常に取り入れない手はありませんね。それだけでなく、自分磨きという行為には、大小なりとも目標が伴います。例えば「キレイになってイベントに備えたい」「英会話をマスターして海外に住みたい」「資格を取って開業したい」など、人の数だけ自分磨きはありますが、心理学的に肝心なのは自分磨きの内容というよりも、何でも良いから「目標を持つ」という点にあります。目標を持ってそれに挑んでいる人は、それだけで輝いて見えるからです。

目標を持った自分磨きは社会性を生み出す

これは私の研究ですが、小学生を対象に東京大学で行った実験(1999年)でも、目標のあるグループは、課題を最後まで意欲的にこなすことが出来た一方で目標のないグループは、やる気がいつまでも湧くことがなく、見るからにダラダラと勉強をしている様子が顕著でした。それだけでなく、前者は「他にこんなこともやってみたい!」という将来への繋がりを希求する(82%)のに対して、後者は「(この実験が)終わったら帰っても良い?」というように、将来への繋がりに関心を示さない傾向が高い(68%)という特徴がありました。この実験から見ても、「自分磨き」を能動的に行い目標を持つことは、心に社会性や正義感を生み出すばかりでなく、「もっとこんなこともやってみたい!」と将来の自分に対して明るい展望を持ちやすくなると言えそうですね。

自分磨きはポジティブになれるということに留まらず、このようなメリットがあるものです。でも、忙しくて自分のことなんて構っていられないという方も多いでしょう。そのような時こそ、些細なことでもOKなので、あえて自分磨きにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。頭の中でゴチャゴチャと迷うよりも、結局は具体的な行動を起こすことが、物事を上手く進める近道となることに違いないのですから。

さて、次回は「撮るのも見るのも楽しい! 写真にまつわる心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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