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vol.65 2023/10/12

人に見られるとキレイになるはホント? ウソ? 美意識にまつわる心理学

人に注目されていることでモチベーションがアップする

人気YouTuberや芸能人を見ていて、「最近この人キレイになった」「昔よりもあか抜けてきた」と思うことはありませんか? 「人は、多くの人から見られているとキレイになれる」...昔からなんとなくいわれていることですが、これは心理学の知見からも事実だといえそうです。

こんな事例があります。第一次世界大戦後のアメリカでは復興のため、工員たちが意欲的・効率的に仕事をこなせるような環境作りについて、手を替え品を替え、大規模な調査がされてきました。ところが意外なことに、いくら職場環境を改善しても、工員たちの生産効率は上がらなかったのです。そのような状況下で、心理学者が注目したのがココ。少々劣悪な労働条件であっても、メンバー同士が互いを認め合い評価し合っていたり、アメリカ全土を挙げての大調査に自分たちが参加していることに誇らしさや張り切る気持ちを持っていたりするなど、「誰かが自分を見てくれている喜び」によって、工員たちはキラキラと働き始めたのです。とくに調査に携わった研究者とフレンドリーに打ち解けた人や自分たちが被験者として注目されているんだ!という気持ちが高くなった人ほど、生産効率がグンと高まっていき、メンタルヘルスも良好なものになっていきました。心理学では、この工場の名前に由来して、この現象をホーソン効果と呼んでいます(米・ハーバード大学 1924~1932年)。

つまり、人気Youtuberや芸能人がいくら高価なアクセサリーや洋服を持っていたり、美容のために自己投資する大金を持っていたとしても、ただそれだけでキレイになれるわけではないです。ほんの些細なことでも良い。自分が頑張ってダイエットしたり、メイクを上達させてキレイになったり、それによって元気になっている。この変遷のプロセスをメディアやSNSを通じて、誰かが確実に見てくれている!という状況が「キレイ」の成果を出すためのキモとなるようです。

自分自身を客観的に見ることが真のキレイに繋がる

それからもう1つ。心理学では「セルフモニタリング」という概念も重視されています。たとえば、あなたがネットやテレビ、毎日のコミュニケーションなどで、たとえ何千人の人々から見つめられたとしても、それだけでは何も成長しないのです。重要なのは「あなた自身があなたを見る」ということ。他者からの評価がグッドであること(外的承認)も心には大切ですが、それとワンセットで、自分自身で自分を承認する気持ち(内的承認)を持てるように意識すること。そのためには、動画や写真を投稿しっぱなしにするのではなく、映っている自分の姿をあなた自身が繰り返し見ることが大切です。

視聴者に最近キレイになったと思わせる芸能人やYouTuberは、オンエアされている作品を自分でしっかり見て、自分のことを入念にモニタリングしているはず。自分は他人からどう見えているだろうという意識を過剰なくらいに持つことで、「あれ、ちょっと表情暗いなあ。次回はもっと笑顔で写ろう」「もう少しダイエットした方が良いかも」と、自分の美意識を高めていくことに繋がる。このセルフモニタリングの蓄積によって、人は本当にキレイになっていくのだと思います。

また蘭・マーストリヒ大(2006年)で実施された高校生を対象とした研究でも、「テストを受けて点数が何点だった。良かったね」という他者承認だけで終わる人は成績が伸びませんでした。それに反して、戻されたテストを見返して、「私はどこが理解不足なのだろう」「自分はどこでミスするタイプなのだろう」と、しつこいほどセルフモニタリングをする習慣のある人は、短期間で成績がアップすることが明らかになったのです。つまり、人に見られることは、それだけで誇らしさや緊張感をもたらして元気になるといえますが、それだけでなく、「鏡よ鏡!私はキレイになっている? 私は素敵に振る舞えている?」と自分に問いかける習慣も併せ持つと、自分を魅力的に演出するための具体的な行動に出やすくなる。だから、自分磨きや自己バージョンアップに繋げるには、(1)人に見られる場に自分を出していくことに加えて、(2)自分自身で自分をしっかりモニタリングする、この公式が近道といえそうですね。

さて、次回は「身に着けているもので何がわかる? 洋服・アクセサリーの心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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