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vol.66 2023/11/09

身に着けているもので何がわかる? 洋服・アクセサリーの心理学

人は「モノ」のエネルギーを借りて、自分を鼓舞する

5歳ぐらいまでの幼い頃、「このパジャマじゃないとイヤ!」とこだわりを持ったり、「ぬいぐるみと一緒に保育園に行く!」と執着したりして、お母さんやお父さんを困らせた経験はありませんか? 発達心理学では、このような「モノ」に対する依存や強い愛着は、大小の差はあっても誰しもが経験していく通過儀礼だと考えられています。

たとえば、スヌーピーで有名なアメリカの漫画『PEANUTS』に出てくるライナス少年は、いつでも古びた毛布を身に纏って指をくわえています。この毛布のことを心理学では「心のセイフティブランケット(安心毛布)」と呼びますが、この毛布を身に纏うことで、寂しい時に自分を慰めたり、心細い気分を励ましたり、不安を紛らわせたりしながら日々頑張っているわけです。

しかも最近の研究では、セイフティブランケットは幼児までの専売特許ではないこともわかってきています。人は大人になってもなお、何らかの形で「モノ」に愛着を持ち、その「モノ」のエネルギーを借りて自分を鼓舞する。これは一生続く行動なのだと考えられています。さて、今のあなたのセイフティブランケットは何でしょうか? アクセサリー? 洋服? スマホ? ハンドバック?...いろいろなモノによって心を支えることは、自分で自分の心をコントロールしようとする上で健全だといえます。

アクセサリーをたくさん身につけている人の心は、実は繊細!?

しかし、それにも程度の問題がありますよね。たとえば私の相談者では、頭から足先まで全身を埋め尽くすほどのアクセサリーをつけてくる人がいます。そのような場合は、不安傾向が高くなっていないか?もしくは人間不信になっていないか?と、少し気にかけながらお話を聞いています。セイフティブランケットの理論で考えれば、アクセサリーがあまりにも多いということは、それだけ心の「鎧」も厚い可能性があることになります。

あなたの周りにも、そういう方がいるかもしれませんね。TPO関係なく、いつもアクセサリーをじゃらじゃらと身に着けている人。そのような人は、一見いかにも見栄っ張りで派手、そして勝ち気な印象を持たれるかもしれませんが、実はその逆で本人は怖がりだったり、不安が強かったりする繊細タイプの人が少なくないもの。様々なストレスに、アクセサリーという安心毛布をつけて心を守っているのかもしれません。

さらに近年注目を浴びている「服飾心理学」というジャンルでは、身に着ける洋服の色によっても、その人の心のコンディションが左右することがわかってきています。たとえば、ある街頭アンケートの実験で、回答に協力的な人の服装は赤や黄などの目立つ色の確率が高いという報告もあります。カラフルで目立つ色の服を身に纏う人は、「社会に対して積極的に働きかけるぞ」「何でも前向きにトライするぞ」という気持ちを持ちやすいといえるかもしれません。

アクセサリーもファッションも、人生を彩る素敵で楽しいものですが、時としてその人の心のメッセージがそこに表れるようです。身に着けているものや色を見ることは、相手のコンディションを想像したり、自分の心理状態を確認する上で、大事なヒントになりそうですね。

さて、次回は「『とっつきにくそう...』と思われがちな方へ! ゲインロス効果の心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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