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vol.67 2023/12/14

『とっつきにくそう...』と思われがちな方へ! ゲインロス効果の心理学

第一印象からの大逆転は大いにあり得る

目つきが鋭い。口下手。笑顔が作れない...そのような人は、第一印象では「とっつきにくそう」「怖そう」という印象を持たれてしまいがち。印象研究の第一人者であるアメリカの心理学者ソロモン・アッシュによると、これは致命的に「悪い印象」ということになっています。なぜなら、人は第一印象で相手の雰囲気が「冷たそうかな?」「温かそうかな?」ということを、瞬時に読み取っていることがわかったからです。

それを実証するため、アッシュは次のような実験をしました。グループAには、ある人のことを「彼は知的です→器用です→勤勉です→ハートウォーミングで温かい人です→決断力があります→用心深い人でもあります」という順番で紹介しました。一方グループBに対しては、「彼は知的です→器用です→勤勉です→でも、少しドライで冷たいところもあるかな→決断力があります→用心深い人です」と紹介したのです。つまり、その人の人柄を「温かい」と「冷たい」の箇所だけを変えて紹介したというわけ。他の情報は何も変えていません。すると、AとBではその人に対して形成される印象が大きく異なり、前者はその人をポジティブに。後者はネガティブに評価することが明らかになったのです。この実験が示すように、人間にとって「温かさ」という印象は、いわばその人の「中心的な特性」とも考えらえるもの。「冷たさ」=とっつきにくさと印象づけられてしまうと、確かに損なことが多いといえそうですね。

また「ゲインロス効果」という心理現象もあります。それはどんな現象かというと、最初に「この人は温かそう」と印象を強く持たれた人は、ある日たまたま疲れていて、相手に少しでもそっけない態度をとってしまうと、「あれ!? 思っていたのと全然違う。もしかして裏表のある嫌な人かも?」などと、急速にガッカリされてしまうという現象です(ロス効果)。そうなると初対面の印象が良すぎるのも考えものですね。そしてその反対もしかり。最初に冷たい印象を持っていた人に、ふとしたことで優しくされたり、手助けされたりされると、「この人、実はすごく良い人だったんだ!」と印象が大逆転して、一気にファンになってしまうという現象もあるのです(ゲイン効果)。いわゆるギャップ萌えですね。人の印象形成とはこのようにいい加減なもので、初対面で「温かさ」「冷たさ」といったざっくりとしたイメージに惑わされるわりには、その後、ふとしたことでそれが大逆転する性質を持っているのです。

近寄りがたく見えるビジュアルを生かせる!?

そのように考えてみると、第一印象で「とっつきにくそうな人」と思われるのは実はラッキーなことかもしれません。最初はギクシャクすることもあるかもしれませんが、たとえば(1)「大変そうだねえ、私も手伝うよ」と目の前の人への関与度を深めたり、(2)「あなたのおかげで助かったよ!ありがとう」と言葉に出して賞賛したり、(3)「私も昔、こんなことでドジしたことあるんだよ。ドンマイドンマイ!」などと自分のネガティブな自己開示したりすることによって、いきなり「あれ!この人すごく良い人じゃない」というゲイン効果が表れるわけですから。そうなったら、「あなたのことを大好き」「あの人は本当に素敵な人なのよ」という信奉者が一気に増えるのは間違いありません。

私は「目つきが悪いから」「顔が暗いから」という自分の決めつけで、「初対面が苦手」「人と会いたくない」という人はたくさんいらっしゃいます。でも焦らずに、人生はいつでも逆転のチャンスと考え、近寄りがたいビジュアルを逆に生かしていくくらいの気概を持てたら最強です。

また「目つきが悪い」という印象を持たれている人は、単に近視や乱視などが原因で、今使っているコンタクトレンズや眼鏡がフィットしていない人が多いとの報告も。確かに目を細めたり、しかめたりして、遠くや近くを見てしまったりすると、第一印象で好印象にはなりにくいですね。一度、自分の視力を確認してみてもいいかもしれません。これは私が最近ハマっていることですが、思い切って少し優しめの色合いのカラコンに挑戦してみるのもアリかもしれませんね。自分自身のテンションも上がるし、「みんなもっと私に気づいて!ほらほら、カラコンなの」みたいな、社会に対して積極的な気持ちが湧いてくること請け合いですよ。

さて、次回は「『内面が見た目に表れる』はホント? 気持ちと外見にまつわる心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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