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- つい一緒に泣いてしまうのはなぜ? もらい泣きの心理学
心理学者 植木理恵の瞳にまつわる心理学
- 心理学者 / 臨床心理士
- 植木理恵
つい一緒に泣いてしまうのはなぜ? もらい泣きの心理学

涙は瞳を守るだけでなく、心も守っている
玉ネギを切っていて涙が出ることがありますよね。瞳を守るために必要な生理反応です。それとは別に、心が傷ついたり、感動したときにも涙が溢れますね。こちらは「情動」の涙。喜怒哀楽の興奮で心がパンパンになったとき、そのまま無理に抑圧していたら、心身が疲れ果ててしまいます。だから、情動の涙で緊張やストレスを洗い流す、これも大切な機能です。
さて、それよりもさらに高度な「人間らしさ」を感じさせる涙があります。それは、「共感」の涙というものです。つまり、自分の喜怒哀楽とは関係がないはずなのに、他人が泣いているところを見ることで、こちらまで「もらい泣き」をするという現象。もらい泣きは、高度な社会性をもった人間だけの営みです。心理学では、この感情の伝染(Emotional Contagion)こそが、人間関係の基盤であると、あらゆる研究で繰り返し示してきました。涙を共有することで「あなたの感情はここに届いているよ」というメッセージが、言葉を介さずに、しかも深く伝わりますよね。感情を共にする経験は、人間同士の信頼や親密さを、一足飛びに高めるコミュニケーションといえます。
また脳科学からは「ミラーニューロン」の研究が、この現象を裏側から支えています。これは、人間の脳には、他者の感情表現を見たとき、自分が同じことをしているかのように活動する特別な神経細胞があるということ。つまり、誰かが泣いている姿を見ると、私たちの脳内では、その悲しみについて「考える」というより、より瞬時にその行動を「なぞる」ような反応が起きているということですね。

よくもらい泣きをする人は、心に余裕がある人
では、もらい泣きをする人ほど、感受性や共感性が高くて優しい人なのか?というと、それは一概にはいえないことでしょう。それらが高い人でも、もらい泣きはしたことがないとか、もらい泣きしたくてもできないという方もいます。
それはどのような人かというと、次の3タイプだと考えられます。
(1)幼い頃から理性を保ち、自分の感情をコントロールするように育てられてきた人
(2)自分の中に心配や恐怖心があって、他人にのめりこむ余裕がない人
(3)「大人は涙を見せないのが美徳」といった信念を心の奥に培っている人
このようなタイプの方は、いくら相手に共感していても、防衛的に涙をセーブするのが当たり前となっています。
反対に「よくもらい泣きをする」という人は、これら(1)~(3)のどれにも当てはまらない人でしょう。感情の抑圧が少なく、心の蓋を大らかに開いて見せることができるタイプです。余裕がある人ともいえます。これは一生涯変わらないものではなく、歳を重ねて経験が増えたり、状況によっても変わっていくものですよね。ちなみに私はドラマの登場人物からはすぐもらい泣きをしますが、仕事でカウンセリングをしているときには、クライアントが泣きじゃくりながら話をしていても、もらい泣きしてしまうことは決してありません。傾聴・共感をしながらも、次の予測をしたり、話の本質を考えるなど心が張っているので、涙をもらう余裕がないのかもしれません。
いずれにしても、泣くという行為は、自律神経の緊張を和らげて、心身を落ち着かせる作用を持ちます。それが他人の涙をきっかけにした涙であっても、同じ好影響が期待されるのです。だから、日常的に「もらい泣き」をメンタルヘルスに活かすこともお勧めです。泣くことはストレス解消になるので、たとえば自分で「小さい子が泣くシーンには弱い」「恋愛ドラマの別れる話には弱い」などいくつか涙のツボを研究しておくのも面白いかもしれません。休みの日に、体の疲れだけでなく、涙で頭の疲れを取るには良い方法だと思います。
Photo by pixta
さて、次回は「なぜ窓の外に目がいくの? 風景と癒しの心理学」についてお教えします。お楽しみに!
つい一緒に泣いてしまうのはなぜ? もらい泣きの心理学

涙は瞳を守るだけでなく、心も守っている
玉ネギを切っていて涙が出ることがありますよね。瞳を守るために必要な生理反応です。それとは別に、心が傷ついたり、感動したときにも涙が溢れますね。こちらは「情動」の涙。喜怒哀楽の興奮で心がパンパンになったとき、そのまま無理に抑圧していたら、心身が疲れ果ててしまいます。だから、情動の涙で緊張やストレスを洗い流す、これも大切な機能です。
さて、それよりもさらに高度な「人間らしさ」を感じさせる涙があります。それは、「共感」の涙というものです。つまり、自分の喜怒哀楽とは関係がないはずなのに、他人が泣いているところを見ることで、こちらまで「もらい泣き」をするという現象。もらい泣きは、高度な社会性をもった人間だけの営みです。心理学では、この感情の伝染(Emotional Contagion)こそが、人間関係の基盤であると、あらゆる研究で繰り返し示してきました。涙を共有することで「あなたの感情はここに届いているよ」というメッセージが、言葉を介さずに、しかも深く伝わりますよね。感情を共にする経験は、人間同士の信頼や親密さを、一足飛びに高めるコミュニケーションといえます。
また脳科学からは「ミラーニューロン」の研究が、この現象を裏側から支えています。これは、人間の脳には、他者の感情表現を見たとき、自分が同じことをしているかのように活動する特別な神経細胞があるということ。つまり、誰かが泣いている姿を見ると、私たちの脳内では、その悲しみについて「考える」というより、より瞬時にその行動を「なぞる」ような反応が起きているということですね。

よくもらい泣きをする人は、心に余裕がある人
では、もらい泣きをする人ほど、感受性や共感性が高くて優しい人なのか?というと、それは一概にはいえないことでしょう。それらが高い人でも、もらい泣きはしたことがないとか、もらい泣きしたくてもできないという方もいます。
それはどのような人かというと、次の3タイプだと考えられます。
(1)幼い頃から理性を保ち、自分の感情をコントロールするように育てられてきた人
(2)自分の中に心配や恐怖心があって、他人にのめりこむ余裕がない人
(3)「大人は涙を見せないのが美徳」といった信念を心の奥に培っている人
このようなタイプの方は、いくら相手に共感していても、防衛的に涙をセーブするのが当たり前となっています。
反対に「よくもらい泣きをする」という人は、これら(1)~(3)のどれにも当てはまらない人でしょう。感情の抑圧が少なく、心の蓋を大らかに開いて見せることができるタイプです。余裕がある人ともいえます。これは一生涯変わらないものではなく、歳を重ねて経験が増えたり、状況によっても変わっていくものですよね。ちなみに私はドラマの登場人物からはすぐもらい泣きをしますが、仕事でカウンセリングをしているときには、クライアントが泣きじゃくりながら話をしていても、もらい泣きしてしまうことは決してありません。傾聴・共感をしながらも、次の予測をしたり、話の本質を考えるなど心が張っているので、涙をもらう余裕がないのかもしれません。
いずれにしても、泣くという行為は、自律神経の緊張を和らげて、心身を落ち着かせる作用を持ちます。それが他人の涙をきっかけにした涙であっても、同じ好影響が期待されるのです。だから、日常的に「もらい泣き」をメンタルヘルスに活かすこともお勧めです。泣くことはストレス解消になるので、たとえば自分で「小さい子が泣くシーンには弱い」「恋愛ドラマの別れる話には弱い」などいくつか涙のツボを研究しておくのも面白いかもしれません。休みの日に、体の疲れだけでなく、涙で頭の疲れを取るには良い方法だと思います。
Photo by pixta
さて、次回は「なぜ窓の外に目がいくの? 風景と癒しの心理学」についてお教えします。お楽しみに!
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