心理学者 植木理恵の瞳にまつわる心理学

心理学者 / 臨床心理士
植木理恵
vol.97 2026/06/11

なぜ窓の外に目がいくの? 風景と癒しの心理学

脳やメンタルの回復には、風景が効果的

仕事や授業中の合間。満員電車やバスに揺られているとき。気がつけば、ボンヤリと窓の外に目が向いていることはありませんか? 「よそ見をするなんて、集中力がない!」と上司や先生に叱られてしまいそうですが、心理学的に見ると、このような仕草はとても自然で、かつ意味のある心の動きであるといえます。

人の集中力は無限ではありません。よって、注意や集中を続けていると、心も体も少しずつ疲労していきます。心理学ではこの状態を「注意資源の枯渇」という言い方をします。そしてそこから回復する過程がメンタルヘルスには大切です。つまり、よそ見をする瞬間は、「脳を回復させたい」「閉塞感から脱出したい」という心のサインともいえるのです。

私が興味深いと思うのは、活字やゲーム、動画など、情報を処理する際、身体に負荷がかかるものは、脳やメンタルの回復に逆効果だという点です。そのようなよそ見では、かえって疲れてしまいます。ある研究では、よそ見が脳やメンタルの回復に「役立つ」のは、街並みや人並み、雲の流れ、木立ちなどの風景であるということが示されています。これらは、一定の意味を持ちながらも難しいことは押しつけてきませんね。なので、授業や会議での集中力をいきなり断ち切るわけでもなく、かつそれでいて、心を水面下で動かしてアイデア促進をしてくれたり、煮詰まった気分から脱出させてくれるわけです。

ショートブレイクによそ見は最適

情報として深い意味があるわけではなく、比較的、規則的に並んでいる外の景色。これらは、心にとって「中程度で丁度良い刺激」と考えられているのです。実際に、大学生を対象に90分の試験をさせた研究があります。(A)のグループには、試験中30分おきに約10秒、よそ見をしてもらいました。(B)のグループは、答案から一度も目を離さずに受験してもらいました。すると、(A)の方が(B)よりも高得点を出せたという結果もあるのです。

またある精神分析医はこう述べています。「目先ばかりを見て生きている人は、人生の本来の目的を失いやすい。景色を眺める人、雲の流れや木立の揺らぎなど自然の力を、人生のメッセージのように受け取れる人だけが、自分らしく生きられる」と。こうして見ると、風景に目をやることは「集中力の欠如」とは、ひとえに言えなそうですね。むしろ、注意や思考、感情を整えるために、心が選び取った、洗練された働きではないでしょうか。つまり、窓の外に目が向いたとき、私たちは怠けているのではなく、次に向かうための準備をしているのです。

ついついよそ見をしてしまう。その視線の先には、「自分を立て直そう」とする静かな心の営みがあります。ですから、仕事や勉強のストレス解消、やる気アップのために、約30分を目処にして、「よそ見」という上手なショートブレイクを意図的に取り入れることをお勧めします。

さて、次回は「みんなに見られていると思うと緊張する? スポットライト効果の心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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なぜ窓の外に目がいくの? 風景と癒しの心理学

脳やメンタルの回復には、風景が効果的

仕事や授業中の合間。満員電車やバスに揺られているとき。気がつけば、ボンヤリと窓の外に目が向いていることはありませんか? 「よそ見をするなんて、集中力がない!」と上司や先生に叱られてしまいそうですが、心理学的に見ると、このような仕草はとても自然で、かつ意味のある心の動きであるといえます。

人の集中力は無限ではありません。よって、注意や集中を続けていると、心も体も少しずつ疲労していきます。心理学ではこの状態を「注意資源の枯渇」という言い方をします。そしてそこから回復する過程がメンタルヘルスには大切です。つまり、よそ見をする瞬間は、「脳を回復させたい」「閉塞感から脱出したい」という心のサインともいえるのです。

私が興味深いと思うのは、活字やゲーム、動画など、情報を処理する際、身体に負荷がかかるものは、脳やメンタルの回復に逆効果だという点です。そのようなよそ見では、かえって疲れてしまいます。ある研究では、よそ見が脳やメンタルの回復に「役立つ」のは、街並みや人並み、雲の流れ、木立ちなどの風景であるということが示されています。これらは、一定の意味を持ちながらも難しいことは押しつけてきませんね。なので、授業や会議での集中力をいきなり断ち切るわけでもなく、かつそれでいて、心を水面下で動かしてアイデア促進をしてくれたり、煮詰まった気分から脱出させてくれるわけです。

ショートブレイクによそ見は最適

情報として深い意味があるわけではなく、比較的、規則的に並んでいる外の景色。これらは、心にとって「中程度で丁度良い刺激」と考えられているのです。実際に、大学生を対象に90分の試験をさせた研究があります。(A)のグループには、試験中30分おきに約10秒、よそ見をしてもらいました。(B)のグループは、答案から一度も目を離さずに受験してもらいました。すると、(A)の方が(B)よりも高得点を出せたという結果もあるのです。

またある精神分析医はこう述べています。「目先ばかりを見て生きている人は、人生の本来の目的を失いやすい。景色を眺める人、雲の流れや木立の揺らぎなど自然の力を、人生のメッセージのように受け取れる人だけが、自分らしく生きられる」と。こうして見ると、風景に目をやることは「集中力の欠如」とは、ひとえに言えなそうですね。むしろ、注意や思考、感情を整えるために、心が選び取った、洗練された働きではないでしょうか。つまり、窓の外に目が向いたとき、私たちは怠けているのではなく、次に向かうための準備をしているのです。

ついついよそ見をしてしまう。その視線の先には、「自分を立て直そう」とする静かな心の営みがあります。ですから、仕事や勉強のストレス解消、やる気アップのために、約30分を目処にして、「よそ見」という上手なショートブレイクを意図的に取り入れることをお勧めします。

さて、次回は「みんなに見られていると思うと緊張する? スポットライト効果の心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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