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  3. 目を閉じる効果とは? 集中力向上やストレス軽減の心理学

心理学者 植木理恵の瞳にまつわる心理学

心理学者 / 臨床心理士
植木理恵
vol.95 2026/04/09

目を閉じる効果とは? 集中力向上やストレス軽減の心理学

視覚情報が遮断されると集中力が高まる

通勤・通学途中や散歩のときに、ふと花の甘い香りが漂ってきたり、旅行で訪れた森林で空気の清々しさを感じたときに、思わず目を閉じて佇んだという経験はありませんか? または帰宅してお風呂に浸かったときや好きなスイーツを口に頬張ったときなどにも同じ経験があるかもしれません。

別に誰にも指図されていないのに、なぜ私たちは気分が良いときに目をつぶるのでしょうか? それは、「目を閉じた方が、感覚をより濃厚かつ精密に味わえる」という原理を、私たちはいつの間にか知っているからです。乳幼児にはあまり見られない行動ですが、大人になるにつれ、この「目を閉じることの効用」を後天的に学習していくと考えられます。

なぜそのような効用があるのか。ひとつは脳科学的な説明があります。ある研究によると、視覚情報の遮断によって、脳が余分な刺激から解放され、集中力が高まりやすくなることがわかっています。つまり目を閉じることによって、より「気持ちが良い」「美味しい」といった感情にピンポイントで集中できるということですね。

また、心理学的な説明としては、目を閉じると、心の働きのひとつである「自己注目」が高まりやすいことが重視されています。自己注目とは、「(自分自身を客観的に見て)本当はどうしたいのだろう?」「自分はどう感じているのかな?」ということについて、自意識がグンと高まることを指します。目を閉じることで外的な情報が見えなくなる分、内的な心への感度や想像力が高まり、率直な自己に辿り着きやすくなるという考え方です。

私が興味深いと思うのは、人はこの「目を閉じる」ことで得られる自己注目によって、幸せな感情になることもあれば、反対に不幸せな感情にもなってしまうという逆説的な現象です。

心が疲れているときこそ、瞳を開こう

自己注目によって幸せな感情になる。これは冒頭の例のように、良い香りや味、幸福感などの「良い感じ」に対して鋭くなれるという状況ですね。日常的に経験されている方も多いと思いますが、仕事や勉強の途中にしばらく目を閉じることでリラックス効果が生まれたり、ストレスが軽減することは実験によっても示されています。

また、瞑想を深呼吸と組み合わせることで、心の安定や感情の整理が促進されることもわかっています。さらに、クリエイティブな発想や問題解決がされやすいという研究結果もあります。これは自己に向き合うことで、頭がクリアになり、モヤモヤが晴れ、幸せな感情が生まれるということですね。

一方、自己注目によって「不幸せ」な感情になってしまうこともあり、こちらも臨床心理学の分野では重視されています。なぜなら、「本当の自分とは?」「自分って一体何?」といった本質に敏感で、そのような「自己注目の習慣」のある人に、うつ病疾患率が高いことがわかっているのです。目を閉じて快楽が研ぎ澄まされるだけならばよいのですが、その反対もあるわけですね。

特に、心が疲れているときやとても悲しいとき、孤独な気持ちのときは、目を閉じて自己注目をすることはおすすめできません。そのようなときに目を閉じて考え込むと、「あのときこうしていれば良かった」「今後は一体どうなってしまうんだろう」といった、考えても仕方がないネガティブな後悔や不安が高まるばかりで、自己注目の結果として落ち込みが増してしまうことが、記憶の研究からもわかっているからです。

瞳を閉じて感じるということは、幸せな気分を高めてくれるとても良い習慣。ですが、気持ちがしんどいときは、むしろ瞼を開くことが有効かもしれません。そして、好きなタレントやペットの写真を眺めたり、お気に入りのお笑い動画を再生してみたり、SNSのダンスに手拍子してみたりと、あなたの瞳に、視覚からのご褒美をチャージする方が、うつ気分からは解放されやすい人生になります。

目を閉じたり、開いたりすることと心は、このように自己注目が起きる・起きないという観点で密接に関係しています。なので、ハッピーなときはぜひ瞳を閉じてその快感情をより味わってください。でもネガティブなときは反対で、面倒でも瞳を開き、過剰な自己注目はお休みしましょう。むしろ外的刺激をたくさん取り入れて、気晴らし上手になることが近道です。視覚のコントロールによって、気分もコントロールできるようになると良いですね。

さて、次回は「つい一緒に泣いてしまうのはなぜ? もらい泣きの心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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vol.95 2026/04/09

目を閉じる効果とは? 集中力向上やストレス軽減の心理学

視覚情報が遮断されると集中力が高まる

通勤・通学途中や散歩のときに、ふと花の甘い香りが漂ってきたり、旅行で訪れた森林で空気の清々しさを感じたときに、思わず目を閉じて佇んだという経験はありませんか? または帰宅してお風呂に浸かったときや好きなスイーツを口に頬張ったときなどにも同じ経験があるかもしれません。

別に誰にも指図されていないのに、なぜ私たちは気分が良いときに目をつぶるのでしょうか? それは、「目を閉じた方が、感覚をより濃厚かつ精密に味わえる」という原理を、私たちはいつの間にか知っているからです。乳幼児にはあまり見られない行動ですが、大人になるにつれ、この「目を閉じることの効用」を後天的に学習していくと考えられます。

なぜそのような効用があるのか。ひとつは脳科学的な説明があります。ある研究によると、視覚情報の遮断によって、脳が余分な刺激から解放され、集中力が高まりやすくなることがわかっています。つまり目を閉じることによって、より「気持ちが良い」「美味しい」といった感情にピンポイントで集中できるということですね。

また、心理学的な説明としては、目を閉じると、心の働きのひとつである「自己注目」が高まりやすいことが重視されています。自己注目とは、「(自分自身を客観的に見て)本当はどうしたいのだろう?」「自分はどう感じているのかな?」ということについて、自意識がグンと高まることを指します。目を閉じることで外的な情報が見えなくなる分、内的な心への感度や想像力が高まり、率直な自己に辿り着きやすくなるという考え方です。

私が興味深いと思うのは、人はこの「目を閉じる」ことで得られる自己注目によって、幸せな感情になることもあれば、反対に不幸せな感情にもなってしまうという逆説的な現象です。

心が疲れているときこそ、瞳を開こう

自己注目によって幸せな感情になる。これは冒頭の例のように、良い香りや味、幸福感などの「良い感じ」に対して鋭くなれるという状況ですね。日常的に経験されている方も多いと思いますが、仕事や勉強の途中にしばらく目を閉じることでリラックス効果が生まれたり、ストレスが軽減することは実験によっても示されています。

また、瞑想を深呼吸と組み合わせることで、心の安定や感情の整理が促進されることもわかっています。さらに、クリエイティブな発想や問題解決がされやすいという研究結果もあります。これは自己に向き合うことで、頭がクリアになり、モヤモヤが晴れ、幸せな感情が生まれるということですね。

一方、自己注目によって「不幸せ」な感情になってしまうこともあり、こちらも臨床心理学の分野では重視されています。なぜなら、「本当の自分とは?」「自分って一体何?」といった本質に敏感で、そのような「自己注目の習慣」のある人に、うつ病疾患率が高いことがわかっているのです。目を閉じて快楽が研ぎ澄まされるだけならばよいのですが、その反対もあるわけですね。

特に、心が疲れているときやとても悲しいとき、孤独な気持ちのときは、目を閉じて自己注目をすることはおすすめできません。そのようなときに目を閉じて考え込むと、「あのときこうしていれば良かった」「今後は一体どうなってしまうんだろう」といった、考えても仕方がないネガティブな後悔や不安が高まるばかりで、自己注目の結果として落ち込みが増してしまうことが、記憶の研究からもわかっているからです。

瞳を閉じて感じるということは、幸せな気分を高めてくれるとても良い習慣。ですが、気持ちがしんどいときは、むしろ瞼を開くことが有効かもしれません。そして、好きなタレントやペットの写真を眺めたり、お気に入りのお笑い動画を再生してみたり、SNSのダンスに手拍子してみたりと、あなたの瞳に、視覚からのご褒美をチャージする方が、うつ気分からは解放されやすい人生になります。

目を閉じたり、開いたりすることと心は、このように自己注目が起きる・起きないという観点で密接に関係しています。なので、ハッピーなときはぜひ瞳を閉じてその快感情をより味わってください。でもネガティブなときは反対で、面倒でも瞳を開き、過剰な自己注目はお休みしましょう。むしろ外的刺激をたくさん取り入れて、気晴らし上手になることが近道です。視覚のコントロールによって、気分もコントロールできるようになると良いですね。

さて、次回は「つい一緒に泣いてしまうのはなぜ? もらい泣きの心理学」についてお教えします。お楽しみに!

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